福岡へ向かう飛行機の中
窓の外に漂う雲の波をながめながら
東京に残る、楓の事を考えていた。
《また、寂しい思いをさせちゃったなぁ…》
毎度の事ながら映画の仕事が入ると
ロケで、暫く帰れない時がある
でも、ここんところ、立て続けで、
楓とゆっくり話しをする時間も
、ままならない…
今回も、福岡滞在は、約1週間
仕事の都合で東京へ帰る事はあるが
楓との時間を取るのは、多分難しいだろう
今朝、家を出る時
『…また一人にさせて、ごめん…』
そう言う俺に、決まって彼女は、こう言う
「私は准が、好きな仕事を頑張ってる姿を見ている事が幸せだから…」
俺を、真っ直ぐに見つめ、微笑む楓が、
堪らなく愛おしくて、思わず抱き寄せた
『ありがとう、でも…ホンマは寂しいんやろ?』
「ん?…ぜんぜん平気♪広いベッドは、独り占めだもん♪」
『ふふん…嘘だね♪』
無邪気に笑い、見上げる楓のおでこにキスをしながら言った。
《知ってるんやで、俺の居ないとき、広いベッドやのに、俺の場所だけシーツが乱れてるのを…》
…と言う言葉は、胸の奥で、呟いた。
「無理しないで、頑張ってね」
『おぅ!』
俺は、この楓の笑顔に励まされ、今まで頑張ってこれた。
《よし!頑張ろ》
『……あっ、週末は、もしかしたら、off取れるかも、知れへんし…なんやったら、福岡来る?』
俺は、まだ確定したわけでもないスケジュールに、楓との時間を予定に入れようとしてた。
しかし、意外にも、楓の返事は、予想外のものだった…
「ごめん…多分、行けない…と思う。」
『何でやねん!!』
…どうやら、仕事が忙しい時期に入ったらしく、休みを取りにくいらしい。
『でも…もし、来れるような事あったら…連絡して…』
僅かな望みを含ませた言葉に
うなずきもせず、ただニッコリ笑う楓
俺は、後ろ髪引かれる思いで、マンションを後にした。
*****************
現場に着くと、幸いな事に楓を思い出す事も無いほど忙しく撮影に集中した。
あっちこっちで、言ってるが、撮影の前半は、多少ノイローゼ気味だったりする…
まぁ…映画を撮る度に、言ってる気がするが…。
でも、今回は、前に撮った【永遠の0】を引きずってるようだ…。
どちらも、戦闘シーンが有り、銃撃戦に
なると、やはり【永遠の0】を思いだす。
それも、そろそろ解消され
福岡ロケも、いよいよ大詰め…
その前に、一日だけ、俺の出番の無い日があり…その日は、必然的にoffになる事が分かった。
もちろん、楓の事が頭をよぎり、早速その事を伝えるメールをしたが、返信は、来ない…。
土曜日の撮影が終わり、帰り支度をしていると、スタッフの一人が声をかけてきた
「岡田さん…これから皆で、食事に行こうって事になったんですけど、一緒にどうですか?」
『…ん~…じゃあ、ちょっとだけ付き合います。』
楓からの返事も無いし、一人で食べるよりは…と、付き合う事にした。
食事の席は今日、撮影のあった共演者&スタッフの方々が集まり、食事&飲み会となっていた。
しばし、映画の話しや、スタッフのハプニングエピソードで盛り上がり、お酒も進んだ…
だいぶ酔いがまわり、いつの間にか、居眠りをしていたようで、隣にいた人に起こされた…
それでも、眠気が解消される事もなく、俺は、そのタイミングで、帰る事にした
『じゃあ、皆さん…お疲れさまでした。』
「岡田さん…ちょっと、待ってください…」
『いや…もう、かなり眠いんで…』
そう言い残し、出口に向かおうとしたその時…
店内に、〔happybirthday〕の曲が流れ、店のスタッフが、ローソクの火が揺れる大きなbirthdayケーキを運んで来た…
ふと、時計を見ると、針がてっぺんで重なり、11月18日午前0時を示していた。
『あ…そっか…今日は…』
日付が変わり、自分の誕生日だった…
『あ…ありがとうございます。撮影中に、誕生日を迎える事は、たまに有りますけど、やっぱり記念になるし、凄く嬉しいです。まだまだ続きますが、宜しくお願いします。』
沢山の拍手の中、32本のローソクを消し、乾杯をした。
再び盛り上がりそうな雰囲気の中、よほど疲れが溜まっているのか、酷い睡魔が襲ってきた。
ここで、寝てしまっては、みんなに迷惑を掛けかねない…。
『あの…せっかく祝ってもらっ、申し訳ありませんが、お先に失礼します。』
ぺこりと頭を下げると、店を後にした。
ホテルへ帰り、部屋にはいると即シャワーを浴び
バスローブを羽織ったままソファーに身をおとした。
缶ビールを飲みながら
背もたれに、もたれかかり
テーブルの上のカレンダーに、目をやる…
デジタルの文字は、
〔11月18日(日曜日)…00:50〕
『楓…来ねぇかなぁ~…』
思わず、声に出す…
誰も居ない部屋に、虚しく響き、切なくなたった。
いつしか、下りた瞼が上がらなくなっていた。
そこからは、記憶がさだかじゃない…
〔キンコーン♪〕
《ん?…今鳴った?》
再び〔キンコーン♪〕
ふらつく体を起こし、薄れる意識のまんま入り口へ行きドアを開けた
そこには、笑顔の楓が立っていた。
《…幻?…》
俺は、そっと手を伸ばし、その笑顔に触れてみた
その手には、いつもの楓の温もりがあった………。
***つづく***
Android携帯からの投稿