楓は、東京で准一の運転で車に乗るのは初めてだった…
旅先の田舎道では、一度だけある、しかも夜…
今日、改めて明るいところで運転する准一の横顔を見てドキドキしている…
《よく、車をバックする時の姿勢と顔が堪らない…って聞くけど…》
と思ったその時…
准一の左腕がフワッと目の前を横切り楓のシートの背もたれに置かれた…
後ろを振り返る准一の顔が、間近にある…
心拍数が上がる楓の頬は赤く染まった
『ん?…何、赤くなってんの?』
「…なんでも無い…」
楓は、恥ずかしくてうつむいた
『そっか!…でも、初めてやね♪都心でこんなん明るいところで堂々と楓を乗せて走るの♪…テンション上がるわぁ—ッ』
准一も、嬉しそうにはしゃぐのを見て、楓は、この計画を実行して良かったとしみじみ思った。
しばし二人は、歌を歌ったり、会話もはずみ、【ディズニー・シー】までのドライブを楽しんだ。
【ディズニー・シー】へ着くと、平日の午前中のわりに、結構人通りが多かったが、すっかり、この世界に慣れた二人は、人目を気にする事め無く、自然と手を繋いで歩いた…
すると、目の前には、お馴染みのミッキーが近づいて来た!
二人は、これはチャンス!と記念撮影♪
たまたま近くにいたスタッフさんにカメラを託してミッキーを真ん中に、両サイドに立った
「相変わらず、ラブラブだねぇ♪」
ミッキーが喋った!!
…なわけ無い…
しかも聞き覚えのある声だ…
『もしかして…剛くん?』
「当ったりぃ~」
『いつから、やってんの?』
「え~!!ずっと前からだけど?ダンスのオーディション受けて、合格して、直ぐミッキーに抜擢されてさぁ~もー楽しいんだこれが」
『ふぅ~ん♪似合ってるよ!頑張ってなッ♪』
「ありがとう!…お前達も楽しんでなッ♪」
剛くんミッキーと別れ、数々のアトラクションを巡り歩き
人気アトラクションの長い列にも、みんなと同じように並び
絶叫系では、大声ではしゃぎまくった


昼食は
運河に面したレストラン【リストランテ・ディ・カナレット】でピッツァを食べた。
「ねぇ~今度は、何に乗る?」
『そやなぁ…』
准一は、呟きながら運河の方へ目をやった
『あ…あれに乗ろう!』
楓も、運河へ視線を移すと、そこには、ゆっくりと流れるゴンドラに幸せそうに寄り添うカップルが乗っていた
「うん、乗りたいッ♪」
その言葉を聞くと、席を立った准一は、楓の手を取り【ベネツィアン・ゴンドラ】の乗り場に向かった
ゴンドラに乗り二人で並んで座り、周りの景色にうっとりとしていると、ゴンドリエの人が声をかけてきた…
「お二人は、御結婚されてるんですか?」
どこかで聞いた事ある声に振り返ると、ゆっくりとオールを操っていたのは、イノッチだった!
『あ゛~イノッチ!!…なんや、こっちの世界では、ディズニーのスタッフなんや♪何気に似合ってるやん♪』
「そっかぁ…ありがとう。で…《こっちの世界》って…?」
『ううん…なんでも無い』
「何か気になるなぁ…まっいいや…ところで、このゴンドラに乗ってキスすると、そのカップルは、幸せになれるんだって♪」
准一と楓は、イノッチの冗談かも知れない"言い伝え"を、素直に受け取り、微笑み合うと、キスをした…
それを見たイノッチは、何気に視線を外すと、またゆっくりとオールを漕いだ…
澄みきった青空の下を、ゴンドラは、滑るようにすすんで行った…


陽が落ちて、夕闇に包まれる頃
クリスマスが近くなって、ディズニーワールドも、クリスマスイルミネーションが輝いていた…
夢のような光のファンタジーの世界を、堪能していたその時…
楓が、准一の上着の裾わ引っ張った…
『えっ…何?』
「時間が…まだ、次があるんだけど…」
すると、いつの間にか側に立っていたのはミッキーの恋人ミニー♪
「夜は、まだまだ長いよ!お二人さん」
『あ゛~健くんや~♪』
准一は、もう何の疑いも無くそう思った
「え~バレてる?実は、剛に誘われてオーディション受けたら、見事に合格したんだけど…何と、剛の彼女に抜擢だよ~!!」
「あっ!そうそう!任務を忘れてた…お二人さんを飛ばさなきゃッ!」
『えっ!!飛ばす?』
あたふたする二人を囲むように健くんミニーがステッキを振ると、星空に包まれ、気がつくと、あるホテルの最上階の部屋にいた
一面ガラスバリの向こうには、イルミネーション輝く夜景が広がって、まるで地上の星空のようだ…
「すごーいッ♪星空を見下ろすなんて、何か不思議な感じ…」
うっとり眺める楓の後ろに、そっと寄り添った准一は、楓の小さな背中を抱きしめた
~つづく~