理科室のグッピー水槽で、外部寄生虫のギロダクチルス(扁形動物)に続き、内部寄生虫のカマラヌス(線形動物)が発生しました。被害の程度こそ「アトランティック・サーモンを全滅させた」と悪名名高いギロダクチルスほどの猛威ではありませんでしたが、再び厄介者の登場です。

カマラヌスの場合、目のイイ生徒諸君、三谷香央里さんとか佐々木日向くんなど(この状況下では、近眼でも目がイイ部類になります)は泳いでいるグッピーを見て、肛門部から赤いヒラヒラが見えるようで寄生されている個体か否かを瞬時に識別できるようで羨ましい限りです(私は近眼から老眼が勝った結果、自動車運転免許証の「眼鏡等使用」条件が解除されましたが、近くが見えにくくなりました)。
 

早速、知識欲旺盛な日向くんが検索してくれて、「餌を多めに与えると、糞と一緒に寄生虫も脱落してしまうみたいです。」と助言してくれました。恐らく経口的に感染し、グッピーの消化管内で成長し、肛門へ出る当たりで腸壁に口器で喰らい付き、虫体を外部に出して全身を躍動させ、あたかも注射器をピストン運動させるようにグッピーの血を吸い、虫体内で幼体(子供)を育てる栄養源にしていることまでは私自身でも確認していました(動画幼体を保育中のカマラヌス)。

が、スクーリングで登校してきた日向くんが実体顕微鏡でグッピーに寄生しているカマラヌスを肛門から引き抜いて観察していると、私を呼びに来て、衝撃的な映像を見せてくれました(動画幼体が放出中のカマラヌス)。実は、私がいくら観察しても幼体が外部に出る状況を観察できなかった理由が、この記事を書いていてハッキリと掴めました。

 

 吸血センチュウ・カマラヌスの幼体(日向くんが発見し、竹内が撮影)

それは、まさに日向くんのイタズラ心の為せる技でした。カマラヌスがグッピーの肛門に喰らい付いて吸血しているうちは、”親虫”が屈伸運動をすることで絶えず新鮮なグッピーの生き血を”子虫”に送り届けるコトができるが、グッピーから”親虫”を引き抜いたことで”生き血”の供給がストップしてしまい、云わば”非常事態宣言”発令となり、”子虫”が”親虫”の横っ腹から避難し出したのだと解釈できる(これは暫定的な考察であって厳密には、この観察結果に関しては追加の確認が必要)。

寄生虫研究の難点は、実験動物として寄生虫の維持が困難なことです。大阪の生物多様性センターなど専門家に尋ねてみたところ、やはり難しい事情があるようです。可能性としては、①養魚場や問屋などから衰弱した選別個体を分けて貰う、②自然界に宿主を網に入れて一定期間浸漬し、自然と寄生虫が宿主に感染するのを気長に待つ、③ケンミジンコ(カイアシ類)が中間宿主になっている可能性が高いので、動物プランクトンをネット採集し、感染したケンミジンコをエサとして提供しつつ待つ・・などの選択肢が考えられる。

付記: なぜ寄生虫みたいな厄介な生き物が存在しているのか、不可思議だと思います。特に、外部寄生虫のギロダクチルスはウッカリすると一つの個体群を全滅させ掛けません。全滅させてしまったら寄生する相手(宿主)が存在しなくなり、寄生虫自身も存続できなくなるだろうに・・と思えます。内部寄生虫のカマラヌス(吸血センチュウ)は、ギロダクチルスと比べると全滅させないまでも、一定の割合で感染した個体群を選別させる効果があるように思えます。生き残る宿主が存在し、心なしか体色の発色が鮮やかなグッピーの個体が生き残ったような気がしています。寄生虫にも何らかの個体群生態学的な意義、集団遺伝学的な意義が隠されているのかも知れません。なお、意外なことにもカマラヌスは戦前、琵琶湖から発見され、新種として記載(カマラヌス目 Camallanida)されています。寄生虫は忽然として湧いて出るように見えますが、自然界で常在している可能性が高いと、今は感じています(竹内記)。