まったく、許可なく終わりやがるな、連休ってやつは。好きな時間に起きて好きな時間に飯をたべる。これは、生き物として至極自然なことなのに、当然ともいえる権利を剥奪された僕はとても可哀想。
この世界で自分は一番可哀想だというくらいの顔で家を出たんだが、笑ってしまうくらい道行く人の顔も悲壮漂っていた。みんなみんな無言で不幸自慢をしている様。5連休を味わった人全員が今朝は重苦しく昨日までの思い出を頭ん中で反芻しているわけだ。
サラリーマンは、叱られてなんぼ。顧客に。上司に。不甲斐ない自分に自ら叱責することもあったり。毎日単調な繰り返しで、10年後を想像したら怖くなるときだってある。僕だけじゃないと思うけど生き物はなるだけ怒られたくないと思っている。人、犬、猫、猿、河馬にだって自尊心がある。自分が根本的に否定されたら辛い、辛い、ものすごく辛いよね。でも、残念ながら私たちはリーマンになってしまったもんで叱られないと社長がサラリーをペイしない。そんなの腹立つわー、逆に叱ってやろうか、業務に穴空けたろけ。いやいや、駄目だ、駄目だ、駄目。想像しただけで恐ろしい。失職が怖い。だから、こうして連休明けの鈍った体を無理から起こして仕事へ向かう。
出社。あー、着いた。タイムカードをガッチャンコと。後輩たちには適当に「ざぁぁす」とか言って、役職者には「おはようございます。いい連休をいただきましてぇぇっっ」血管がキレるほどに元気に快活に御挨拶。我が営業部は、一にも二にも元気、元気、元気。ここは、児童館かよ、ったく。
しかし、あれだなもうすぐ始業なのにあまり人がいねぇな。「お~い。松野くん。いやに人少なくね?」答える松野くん「他の人は木、金と有給休暇入れて9連休っすね。はい」うぅわ。そんな戦法があったのね。有休ってむやみやたらに取るもんじゃないのか。計画的に取らないとね。知らなかった。
ジリリリンと始業を知らすベルが鳴って仕事が始まったけども他の計画的な休みを取った猪口才組のことが気になって捗らない。あいつらはまだ寝てるかも。朝から好きなもんを食ってるのかしら。あー昨日まで僕もそうだったように。畜生。
すると、上の空で仕事をひとつも上げない僕に課長がキレた。みんなが見てる前にて。恥ずかしい、辛い、口臭い。休み明けにはこたえる。
ふふふ。しかし、猪口才組が居眠ってる中、俺は叱られている。ははは。サラリーが確実にペイされる。ふはは。