「昔から・・・・・・さ」




ゆっくりと頭を撫でながら彼が話し出した




「・・・・・・・20年も親元離れてこういう世界で働いてると・・・・・・」





自分の過去のこととかわざわざ話したりしない彼なのに





「いろんなことがあるからね・・・・・・・」





ゆっくりゆっくり愛しむように撫で続けてくれている





「そういうこと全部に対して怒ってたら・・・それだけで消耗しちゃうから」





いろんなことがどんなことなのかまったくわからない





ジャニ-ズだから顔と体だけでいいって言われてた、そんな時代があるとか聞いたことがあるけど





「どうせならそういったことを力に変えられるようにって」





目の上に置いてくれている手が少しだけ重くなる





「ただ怒るよりその方が得だからね」





ちょっとふざけた感じで言った





「そうなんだね・・・・・」





そう思えるようになるまで、どれぐらいの怒りを抱えていたんだろう





そんな精神状態でどうやって学生生活や仕事をこなしていたんだろう





私には想像さえもつかない





のんきに日々をおくって今まで来てるから





それでそれなりに楽しく過ごしてきたから





目の上に置かれたタオルの上にある彼の手に





右手をそっと重ねる





「んふふ」



優しい低音




喉の奥での笑い声


「准君・・・・」





私にできることがあるとは思わないけど




それでも何かできたら・・・と思ってしまう