映画公開が落ち着いたと思ったら新曲関係でまた慌ただしい
仕事があるってことは本当にありがたいことだから、どんなにタイトに詰まっていても全力でがんばるって決めて臨んでいる
そんなわけでメ-ルをもらったのに一日空くことはなかなかなくて、結局また金曜の夜からってことになった
俺は夜からだと泊まってゆっくりしてくれるから嬉しいんだけど
彼女は「おうちデ-ト」なんてメ-ルしてきたぐらいだからきっと昼間のんびりしたいんだろうと思う
いつもいつも俺に合わせてもらってばかり
そういうことを気にしたりはしない彼女だけど、これを逃すとまた地方での新しい撮影が入っていてなかなか会えなくなるから、俺はなんとか土曜日のお昼すぎまで時間を確保した
そして金曜日の夜
次の撮影の準備とかがあったけど、俺の早く終わらせるぞという気合いがすごかったのかどれもこれも時間より早く終わり、彼女より先に家に帰っていた
それから30分後に彼女がやってきた
「いらっしゃい」
ドアを開けて彼女を迎え入れる
最近は彼女が先にいることが多かったからなんだか新鮮に感じてウキウキしてしまう
「こんばんは」
仕事帰りに直接来た彼女は荷物が多い
靴を脱ごうとしているからカバンを預かり、手を差し伸べる
「ありがと」
俺の右手に捕まりながら靴を脱ぐ
「なんかいい匂いがする~」
部屋に上がった彼女が低めの鼻をクンクンさせて言ってきたから
「んふふ。久しぶりに時間あったからね」
おいしいって食べてくれている顔を想像してニヤニヤしてしまう
「あ~、パスタだね!」
茹でるだけに用意しておいたパスタをお湯が沸いた鍋の中に入れる
「べ-コンとブロッコリ-?」
手元のフライパンを覗き込んでくる
「ん。好き?」
「うん、大好き~」
パスタがくっつかないように鍋の中をゆっくりかき回していた俺の背中に、彼女がぺったりとくっついてきた
俺の脇から差し入れられ腹部にまわった腕が、コンロのそばで危ない気がするけど幸せで離すように言えない
「んふふ。甘えてるの?」
珍しい彼女の行動に浮かれて口に出さなくていいことを言ってしまってから
しまった、と思う
恥ずかしがり屋の彼女だから、そんなこと言われてら離れてしまうだろう
とがっかりしたのに
「・・・・・・・・・・・・・・・うん」
俺の背中にまさかの彼女の言葉が染み込む
仕事でなんかあったのか…
何があったかわからないけど、凹んでるっぽい気がする
ピピピッ
タイマーが鳴ってパスタが茹で上がった
「冷蔵庫からサラダ出して」
とりあえず食べてからだな