当初は映画の感想のみを書くつもりでしたが、川村元気さんの原作小説が最高だったので、小説メインで映画との比較コメントに変更しました…
「この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる」
僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計……そして、猫。
僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。
二〇一三年本屋大賞ノミネートの感動作。
2回目の鑑賞
実は、1回目の鑑賞で、キャスティングが良く、映像は素晴らしく、感動する部分もあったのですが、どうにもしっくりこない部分があって、再鑑賞してみたかったんです…
小林武史さんが音楽を担当していて心地いいし主題歌HARUHI「ひずみ」はやはり印象的でした。
また映画好きの親友とのエピソードでレンタルビデオ屋で働くタツヤ(あだ名ツタヤ)が映画を紹介したり解説したりするシーンがあり「メトロポリス」「太陽を盗んだ男」「アンダーグラウンド」などコアなセレクトに、ニヤニヤしてしまいました。
が……
途中「映画」の消滅から急にブエノスアイレスのエピソードに飛んでしまうしっくりこない流れの違和感が前回鑑賞と同様にやはりあって…
今度は原作を読んでみました。
いろいろ映画としてエピソードが語られる順番が変更されていることがわかり、上記の違和感も合点がいきました。
そして心から思いました。
この原作通りの流れであれば…
そして川村元気さん、ご本人が脚本やプロデュースに携わっていれば…
エピソードの変更が必要だったか…
エピソードの配分はこれでよかったのか…
もっと原作で伝えたかった部分がたくさんあったとわかり、もったいなく思えてきました。
岡田惠和が脚本、永井聡監督という大好きなスタッフでしたので、どこで原作から離れていったのか…監督の映像演出は素晴らしいので、もっと最高の作品になったのでは…と思ってなりません。
やはり映画では見せ場としていたブエノスアイレスのエピソードを削ってでも…
原作にある「土曜日:世界から僕が消えたなら」での自身を死を見つめるエピソードや父さんへの思い…をしっかり描いて欲しかったなぁ
あと原作の猫は言葉をしゃべるのですが、映画ではしゃべらない設定に変更されていて、そこは良かったような気がしました。
原作で多くの心に残る言葉が語られていましたので書き留めておきます。
人は携帯を発明することにより、携帯を持たない不安も同時に発明してしまった。<P49より>
電話ができることで、すぐつながる便利さを手に入れたが、それと引き換えに相手のことを考えたり想像したりする時間を失っていった。電話が僕らから、想いをためる時間を奪い、蒸発させていったのだ。<P74より>
死ぬときに浮かぶのは、あるべき未来への後悔だ。未来なのに後悔という言葉はおかしいのかもしれないが、もし自分が生きていたらと思わずにはいられないことだらけだ。<P104より>
家族って「ある」ものじゃなかった。家族は「する」ものだったんだ。<P176より>
あなたは最後の最後で、大切な人や、かけがえのないものに気付き、この世界で生きていることの素晴らしさを知った。自分の生きている世界を一周まわってみて、あらためて見る世界はたとえ退屈な日常であったとしても、十二分に美しいということに気付いたんです。<P201より>
映画では、多く語られず映像演出から感じるよう描かれていましたが、
この映画が好きな方は原作読んで、より深く作品を楽しんでいただければと思いました。