五輪エンブレムと医療倫理 | 循環器内科医の健康広場

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おはようございます。布施淳です。

世の中を騒がしている、東京オリンピックの佐野研二郎氏のエンブレムの盗用疑惑。


五輪エンブレムの使用例の羽田空港や渋谷交差点の画像を無断転用したことが指摘されています。また、五輪エンブレム以外でも、過去の数々の作品の盗作疑惑や、部下がやったとされるトートバッグデザイン盗用例も指摘されています。


そのような背景のもと、真偽はともかく、ネットを拝見する限り、五輪エンブレムもほぼ盗用、、、という流れになっています。


佐野氏個人への批判のみならず、「佐野氏ありきだった」と囁かれる選考委員会への疑惑、ひいてはデザイン業界全体への不信感も露わになっています。


しかし、一方で、この記事では、五輪エンブレムのデザインは盗用ではなく、オリジナルの作品である、としています。デザインのプロが見れば、オリジナルであったことは明らかだそうです。

やはり佐野研二郎は凄かった!五輪ロゴが盗用ではない明確な理由を簡潔に解説

http://blog.ks-product.com/tokyo-olympic2020-logo2/


ネットで騒いでいる素人とは異なるプロの視点は違います。なるほど、と納得する点は多々ありますし、何よりも、佐野氏がそのデザインに込めたとする深い意味に驚きすら感じました。


五輪ロゴが完全にオリジナルであったのか、盗用だったのか、ここでその真偽のほどを検討するわけではありません。

問題なのは、「盗用と疑われてしまうこと」だと思います。

「一般市民」に「疑われてしまうこと」だと思います。



デザインのプロが見たら「盗用ではない」、「オリジナルだ」、「問題ない」では通用しないということです。

一般市民が見ても「盗用ではない」、「オリジナルだ」、「問題ない」と判断できるものを作るのがプロなのだと思います。

オリジナルでも、結果的に他のデザインと類似したものになってしまうことも当然あると思います。そのプロセスやコンセプトを、素人の一般市民にも理解できるようなプレゼンテーションを施し、オリジナリティーをアピールすればよいと思います。プレゼンしても、伝わらなければ意味はありません。



先日、ある学会で臨床研究に関する医療倫理の話を拝聴しました。

製薬会社の深い関与により臨床研究のデータを不正の操作していたことが明らかになり、複数の論文が撤回された事件がありました。

医療界と製薬会社は共同して医療発展を志すことは当然ですが、医師と製薬会社の過度な癒着は厳禁です。

臨床研究にたずさわる医師は製薬会社や医療機器メーカーとどこまでの付き合いが許容されるのでしょうか。


医師は製薬会社の社員と食事に行ってもよいのでしょうか。

医師は製薬会社の社員に食事代を出してもらってよいのでしょうか。

医師は製薬会社に弁当を提供してもらってよいのでしょうか。

医師は製薬会社にボールペンをもらってよいのでしょうか。

医師は製薬会社に学会出張費を払ってもらってよいのでしょうか。

医師は製薬会社にタクシー代を出してもらってよいのでしょうか。



医師として「このくらいなら良いだろう」という線引きはあろうかと思いますが、それはあくまでも「医師の感覚」です。

その線引きが、必ずしも「一般市民の感覚」とは一致しません。

「このくらいなら良いだろう」と医師が思っても、一般市民には「不正ではないか?」「癒着があるのでは?」と解釈されるかもしれません。

医療業界=医療ムラの常識と、世間一般の常識は異なる、、ということです。

臨床研究の生命線は「信頼性」です。重要なことは「一般市民からどう見えるか?」ということであり、医療業界・医療ムラの論理は通用しない、ということです。

臨床研究にたずさわる医師は、一般市民に誤解されるようなことは、一切すべきではないということです。




今回の五輪デザイン問題も、少し似ているのかもしれないと思いました。

デザインも「信頼性」がもちろん重要です。「一般市民からどう見えるか?」です。デザインそのものはもちろん、その作成プロセス、コンセプト、込められた深い意味、、、それを誤解なく「一般市民」に伝えること。そして、日頃から誤解されるような行動を慎み誠実な態度を示すこと。

単に、「プロのデザイナーが見ればオリジナル」というデザイン業界・デザインムラの論理は通用しないのだと思います。

選考委員会やデザイン業界への批判の件も、まさに「デザインムラ」になってしまっている一つの象徴ではないかと感じました。


どんな業界も「ムラ」にならないように心がけなければいけないし、他人事ではない出来事と思いました。