朝の拙者の仕事は大殿様を眠りから覚ますことから始まる
初めはこの仕事にも慣れなかったが
日々積み重ねることで体が覚えてくれるというもので
今では気をつけずとも体のほうが反応してくれる
思えばこの勤めを任された時は
大殿様と向き合うなど
一介の足軽にすぎなかった拙者には到底理解できるはずもなく
ただただ
大殿様の気難しい表情を窺う事しか出来なかった
仕事の一つもろくに出来ない拙者を甘やかすことなく
言葉一つをとっても難解な何かしらにしか思えぬような拙者を
大殿様は訝しい顔をしながらも気長に育ててくれた
決して才に恵まれているとは言えぬ拙者に大殿様は
日々精進よ
と言わんばかりに新しき伝文を拙者に見せてくれた
返事はお前の役目よ
と
慣れぬ事も実践からと不器用な拙者に仕事を与えてくれた
その甲斐あってか
今では拙いなれどもいかようには使い物になろうかというところまで
拙者の腕も上がってきている
それも
一介の足軽にすぎない拙者にたゆまない期待をかけてくれた大殿様あってのことだ
近頃は体調が優れぬ事もシバシバあれど
それでも下々には威風堂々となさっておられる
ご自分の体の事よりもお勤めの方が大事なのだ
だからこそ
みな大殿様を慕いついてゆくのだ
かくいう拙者も……
ああ遺憾
大殿様の事となるとついつい言葉が溢れてしまう悪い癖かもしれんな
そうこうしている間にもこんな時間か
早く大殿様には眠りからお戻りになってもらわねばな
失礼いたします
大殿様…拙者でございます
昨日も大変お疲れになっておられましたので
そのままお休みになるのも致し方なしと思いま……
大殿様?
大殿様??
大ぉ殿ぉ様ぁあ!!
2010年9月30日
福山領
デスクトップ大殿様
天に還る。
何てこったあああ!!