地獄の叫びウィークが終わり
少しゆったりとした始まりで気が緩んでしまっていたのかもしれない
よもや
こんな事になっていようとわ…

朝からやることやって
いったん自宅に戻り
次の仕事まで時間があるゆえに
録り溜めしていたテレビ番組などを観たりしていた

久方ぶりにゆるりとした時間だ
などと考えていたせいかあまり身の回りに気を配っていなかった

そういえば今日は事務所から電話かかってこないなぁ~

程度にしか思っておらず
来週そうそうに歯医者にいきたいから予約しなくっちゃ
と思いたった時にはもう5時をまわっていた

とてつてと携帯様のおわす座敷に向かい足を踏み入れようとするやいなや


『殿ぉ!大変でござります!

大変でござりますぞぉ!!』


「おいおい騒がしいな
ひとまず落ち着くが肝要ぞ
ほれ
ここに茶がある故
グイッとやって息を調えるがよかろう」


『はっこれはかたじけのうござる

グビグビ
くふぅ~!これは美味な茶にござりますなっ
してこれは何茶でございますか?』


「そんな事はどうでもいい一体何事ぞ?」


『はっ!左様でござった!殿!大変にござります!』


「それはもう解った早く続きを申せ」


『失礼いたしました
殿!大変にござりますぞ!』


「お主ワザとやっておらんか?

いい加減にせんと蟄居でも申し付けるぞ」


『あいや殿が逐一反応あそばされるので

仕切り直しておるのですが…』


「ワシのせいにいたすか?

まぁ埒があかんので今は赦すが後で覚えておくがよいぞ
していかがいたしたのだ?」

『はいっ
携帯様が…
携帯様がぁ…
天に召されましてございます!!』



「なっ!?

ナニィィィイ!?」

そんな馬鹿な!?

今朝はあんなにご機嫌麗しゅう振舞っておられた

携帯様が何故に!?


ああ

携帯様が

携帯様があああ


そこからはもう阿鼻叫喚の地獄模様
最近は携帯が煩わしく感じる事もあるくらい連絡以外で携帯を使用しなくなっていたとしても
いざ
携帯様が僕を見限ってしまってはもういてもたってもいられない

決して多くはないアドレス帳も
そのうち載せようと思っていたネタ写真も
全てが水泡に帰していた…


ああ!早くっ!

早く新しい携帯様を崇め奉らねばぁ!


鼻水垂らしながらも
急いで携帯ショップへ向かう
仕事までには何とかしなければ不足の事態に対応出来ない
(既に不足の事態だがそこは目を瞑るところだということをここに記しておく)

そういへばつい先日も携帯様を忘れた挙句にお金も下ろし忘れたまま

日曜日の深夜仕事に向かってしまい帰りのタクシー代を親方に借りてしまった事を思いだしながら自転車を飛ばし携帯ショップへ向かう31歳


ああ

最近は煩わしさすら感じていたのに

天に召されてしまったとたんに

もう不安で不安でたまらないこの感覚はなに!?

まるで

好きでもないと思っていた彼女が置手紙を残して蒸発してしまった時に

彼女の大切さを初めて実感するダメ男のようじゃないかっ


天岩戸に到着せしめた其は

天に祈りをささげ

新機種代というお布施を収めて見事新しき携帯様を岩戸より導き出した


スリムかつ高性能な新しき携帯様に満足しつつも

メモリから姿をけした数多の戦友達


ああ

また俺は一人になってしまったのか…


孤独を胸に

ネット掲示板にその旨を記して幕を下ろしたのでした




ただ


この不慮の事故による不運よりもフに落ちないのは

携帯様が天に召されるまで気づかず観ていた録画番組が


アメトーク


「携帯が無いと

不安芸人」


だったというコト


いくらなんでも神様よ


出来すぎやあらしまへん?