30歳が終わりを迎えようとしている今だからこそ

語っておかなければいけない事がある


僕が生きた30歳という一年間の時間の中で一番衝撃的だった出来事を

あれは巷が日食で沸き立つ夏のある日の事


当時に記した通り


渋谷の街でも日食となればあの人もこの人も空を見上げてばかりのあの日の事だ


周りのみんなが手を額にかざしながら天空を仰いで動かない姿を眺めながら仕事に向かっていた僕


運よくうす雲に遮られたお天道様が欠けていく様を

肉眼で確認できたことに上機嫌になりながら現場に向かっていた


現場のビルに差し掛かった辺りで今少し時間に余裕があることを確認する


仕事開始25分前に到着


いい時間ではあるが若干早く着きすぎたようだ

であればコンビニにでも入って

暑い中を闊歩してきた熱を冷ます一杯でも買うべと店に入る


緑の看板に『家族のお店』と書かれたコンビニエンスだ


当時は若干甘めのカフェオレを好んで飲んでいたため迷わず件のブツを物色しに行く

残念ながらこちらには置いていないようだ

ならば致し方なしと

飲む杏仁豆腐なるものを購入す



同時に仕事前には必ず飲むホットな飲み物も同時に購入す


真夏にホットを買う輩はあまりいないのか品物自体が少ないので

銘柄には拘らず取りあえず『頭領』のカフェオレホットも購入




用事を済ませたところで時間を確認

まだ20分はある

ならば雑誌を物色せねばなるまいて

ということで雑誌のコーナーへ移動する


まぁまぁ巷は夏休みだ

渋谷のど真ん中のコンビニの雑誌コーナーは昼日中といへども若干の混み具合

それを無理にかき分けてまで読むべきものは今時分には存在しまいて

考え

そこを後にしようとした刹那

一つ気になるモノが視界に入る



それは

赤いリュックを背負った少年だった

まぁそれ自体は夏休みの渋谷では決して珍しい光景ではない

その少年の背格好から察するに

齢10を数える頃くらいか

見受けられる外見であった



その10歳ばかりの少年がただの一人で

渋谷のコンビニエンスで何をしていたかというと

その雑誌コーナーに佇んでいたのだ



図解するとこう




福山潤オフィシャルブログ 気になるアイツはポンチョ~ヌ Powered by Ameba-090925_2009~01.JPG



いや

勿論ただ佇んでいたのではないが

彼が何か特異なことをしていたわけでもないのだけれど

それでも目に付いてしまったのは

その少年が佇んでいた雑誌コーナーが

一般誌の横にある

エロ本コーナー



だったせいだ



それはもう見事なたたずまいで

上の図では表現していないけれど

両の手でリュックのベルト部分をしっかり握って起立の姿勢を崩さず

かれこれ5分くらいは微動だにせずに



じっとエロ本棚を見つめている



この若さにして既にお年頃なのか?

という疑問もさることながら

この純な少年のあくなきまっすぐな視線に何故か目が離せなかったのだ



もしかしたらお父さんかお母さんの買い物を待っているのだろうか

その待っている間に週刊少年漫画でも見ようかと立ち寄った雑誌コーナーで

イケない大人の書物に目を心を奪われてしまったのか?

ああ!何というひたむきな視線なのか!?



図解するとこう



福山潤オフィシャルブログ 気になるアイツはポンチョ~ヌ Powered by Ameba-090925_2014~01.JPG



目の高さに陳列棚の一段目が来るくらいの身長にて

屈むこともせず

他に目移りすることもせず

ただじっと一点のみを見つめている



それを気づかれないように目線で追う

その視線の先にあったものは

以外にも



エロト○ア風

劇画タッチ官能漫画雑誌



だった



早い!

早過ぎるぞ少年!


そこに行きつくにはまだ行くべき処があるはずだ!


その劇画官能漫画雑誌の表紙には

明らかな昭和のフレグランス漂うイラストにて

下着姿の女人が女豹のポーズにて背中を向け

こちら側を首だけで振り返り

その振り返った表情がこれまた昭和フレグランス漂う顔をしている

さすがに愛の探究者である僕でもこの風味のイラストには

エロスというよりも


ノスタルジー


を感じてしまう

だけれども少年は

その生まれもった団塊の世代の如きセンスにて

しかとデカデカと描かれたお尻のイラストに視線を向けている


そうか

この少年はこのリアルな劇画に母の面影を感じているのかもしれないな

なんてバカなことを思うくらいにその眼は真剣だ



思い起こせば

僕が鼻をたらしていた少年時代は

家族の食事中にテレビの洋画でラヴシーンが流れ出すと

なんかこういてもたってもいられず

行きたくもないトイレに駆け込み

見たいよな見たくないようなそんな相反する感情と闘っていたような少年だったのに



僕が鼻を垂らさなくなり始めた少年時代でも

目にするエロ本は大抵が誰かが捨てた

しかも何故か雨で濡れたヨレヨレのモノを悪ガキが拾い

みんなで秘密基地と称した段ボールとベニヤで建ててある会合場所で

顔を寄せ合い背徳感と好奇心とのせめぎ合いをしているような少年だったのに



それに比べ

今のこの少年はなんと毅然としていることか

これは将来大物になるに違いない

我大器を見たり

確信して店を後にしようとした

何だかんだで更に5分くらいは見てしまっていたようで

仕事の時間になりつつあったのだ



いいものを見たような心持で

自動ドアを潜ろうとしたその時

一瞬ただならぬ気配を感じた僕は後ろを振り返った


すると


あの数分にも及ぶ見つめ合いから

容姿と微動だにしない佇ゆえに

あれが二宮金次郎か

見間違うほどに勤勉たる姿勢の不動から


ダッ!!


少年が動いた

まるで

生き別れの母に抱きつくが如く

迷いなく

体一杯に

身も心を預けるように


目の前にある

二冊の劇画のお尻に

両の手を当てて

撫で回し始めたのだ




図解するとこう



福山潤オフィシャルブログ 気になるアイツはポンチョ~ヌ Powered by Ameba-090925_2012~01.JPG


それはもう優しく

丁寧に

小動物をなでるが如く

ダニエルさんがワックスをふき取るが如くの

タッチで撫でていた


あまりの衝撃に僕は

この子の両親がここに居やしないか店内を見回したが

そんなものいても解る訳もなく

ただただ目の前で繰り広げられている光景に



だ…だめ!!!



心の中で

母なる気もちにて叫んでいた


その後

この少年がどうしたのかは僕は知らない

衝撃を受けつつも

僕は事の顛末を見届けることなく

なすすべもなく

呆然とした頭のまま仕事へ向かったのだった



巷は皆既日食だなんだと騒いでいたが


僕はそんなものよりも

貴重な一瞬をこの眼に焼き付けることになった



スタジオへのエレベーターの中でふと思ったことは


左のお尻がお月さまで

右のお尻が太陽だとしたら

あの少年の手の中では皆既日食が起こっていたのかもしれないなぁ


なんて訳の解らないことを考えていた



この衝撃は文章では伝えきれないと思い封印していたけれど

30歳最後の瞬間にここに記すことこそが重要のように思えて仕方がないのは

一体何故だろう…



明日にゃ明日の風が吹く




みんなこれからもこんな福山をよろしくね