女三人集まれば姦しい
とはよく言ったモノ
先日食事をとっていた時の事
ヴ～ム ヴ～ム
と
携帯電話がヴァイヴる
後輩（女）からだ
てっぺん近くな今時分に一体何だろう
と
思い
食事を止めて電話を取る
はっきり言って僕の携帯にはあまり仕事以外の電話がかかってくることはなく
仮に何某からかかってくる事になる場合は
大抵が問題事か相談事だ
それ故にある程度心の準備なんぞをしてから電話に出たりするのだが…
ぽちっとな
夜遅く済みません
今福山さんに聞きたい事がある
っていう人がいるので
電話代わりますね
おいおい
ろくな挨拶をする間もなく要件を言われ
挙句に誰かに代わるという
まったく
フレンドリーにも程があるな
電話を誰かに代わる間に解ったことは
先方の場所がかなり五月蠅いという事
おそらくは飲み屋にでもいるのだろう
それは電話を掛けてきた後輩（女）のテンションからも何となく察すれるし
話し声がかすかに聞こえるが
雰囲気的に3人以上かそれくらいはいるようだ
等々考えているうちに僕に聞きたい事があるらしい人物の声がした
あ、じゅんじゅん？○○だけど
○○さん
大変アクティブかつバイタリティ溢れる傑物（女）だ
たぶんこの方とは殴り合いのケンカをしたら男の僕でも
ボッコボッコにされるかも知れないくらい強いのかも知れないな
と
密かに尊敬と畏怖の念を抱いている豪傑（女）だ
そんな人物がいったい何を僕に聞きたいというのか
じゅんじゅんはさぁ
自転車乗ってんじゃない？
はい
乗ってますね
で
それで聞きたい事があるんだけどぉ
ははぁピンときたぞ
つまりきっとこうだ
最近は巷でも空前の自転車ブームといっても過言ではない今日この頃
自分も趣味だかトレーニングだかの一環として自転車を購入しようと思っているのだが
メーカーやら車種やらかなり選択肢があり
どれを選べばよいのか迷っているから
この自転車大好きポンチョ（大好きでも左程詳しくは無い）に助言を求めよう
と
そういうことだろう
そんな事を思いめぐらせ推理気分に浸っていた僕は
もう既にどんな自転車を薦めようか考えていた
じゅんじゅんが乗ってる自転車は何かサドルが細いじゃない？
あぁはい
そうですね
普通のママチャリとかと比べたらかなり細いですね
そう
僕の愛車は俗に言うロードバイクでタイヤとサドル等
いろんな処が細く軽く作られている
痛くないの？
なるほど
流石は女性だ
ロードバイクに興味はあるが
サドル等競技っぽい作りのものは
初心者には慣れるまではきつくないか心配なのだろう
大丈夫
自転車のすそ野はそんなに狭くないからね
という事は第一候補はロードバイクかな
ならば
ああ
痛くは無いですよ
お尻の形というか骨盤の形に合わせたサドルを選べば問題なく
限度はありますが
僕なんかは一日50キロ乗っても痛くはならないですからね
ちがう
え？
お尻じゃなくって
はぁ？
お尻じゃなきゃ何だというんだ
それ以外自転車に乗って痛い処なんかないだろうに
女の私たちには解らないものが
あなたには付いているでしょう？
……
……
……
如意棒の事ですか！？
何を聞きだすんだこの豪傑は
いや豪傑だからこそか
しかし
女三人集まりゃ姦しいとはよく言ったものだが
女だけで飲んで楽しくなってタガでも外したのだろうか
と
考えていたら
返答までの間で何を考えているのかを悟られたのか
あ
ちなみに酔っ払ってないから
シラフで聞いてるからね？
余計悪いわ
しかしまぁ
こんな事ぐらいでひるんだりするようなポールニューマンではない
こんな事を恥ずかしげもなく僕に聞いた事を後悔させてやる
くらいの気持で
さも平然と
理路整然と
懇切丁寧に
答えて進ぜよう！！
ああ
まぁそうですよね
女性には確かに解らないことでしょうから仕方ないですよ
確かにサドルは細いですが
お尻の形自体にフィットしていれば
クランク回す足の上下運動をしても如意棒程度のスペースは確保できますから
ふふふ
どうだ
うろたえもせず
理路整然と解り易く
そして「如意棒」というワードを織り交ぜて
むしろ無効をけん制さしめるこの返答わ
もうこれはすでに勝ち戦だとタカを括り始めた元ポールニューマン
ちがう
え？
それじゃない
それ？
その両サイドに
大切なものが付いているでしょう？
自転車をこいでいるときに痛くないのか
はたまた
そのとき何故痛くないのか知りたいのは
その棒じゃなくて……
……
……
ゴールデンオーブ
のことですか！？
なんてこった
流石は豪傑だ
こちらのはるか上を行く胆力にて
カウンターを仕掛けてきやがった！？
てか如意棒とゴールデンオーブとでは
上下運動による影響が違うに違いないという
メカニズムを考慮した上でのこの相談
半ば酔った（本人はシラフだと言っているが）勢いや
姦し娘の悪乗りかと思っていたが
この女
ガチか！？
まさかのガチ質問にうろたえてしまった僕は
仮に将来自分の子供に
「ねぇ子供はどうやってら出来るの？」
と
聞かれる日が来ても
毅然と優しく
保健体育の
授業をしてあげよう
と
胸を張って言っていた僕が
キャベツからだのコウノトリが運んでだの
と
子供だましにも程があるような説明にしかならず
31を迎えようとする男の中に
まだ捨て切れない
何かを見たような気がした
豪傑に見事なまでの敗北を味わわされた僕は
切れた電話をテーブルに静かに置いて
冷め始めたご飯を一口口に運んだのでした
え
何の御飯かって？
一人焼肉だよバカ野郎
そんな寂しい30歳もあと10日と少し