以前
ある作品のCMの依頼が来た

それはアニメーションのパッケージの宣伝だったのだけれど
その作品には僕は出演していない

それどころか
普通は作品に関わってもいない声優にCMの依頼がくれば十中八九はナレーションというのが業界の常
というか当たり前だ

しかし
その依頼は若干様子が違った

事務所からの連絡は


『オ○ギとピ○コみたいな感じで自由に喋って欲しいそうです』



何を言っているのか解らない
つまり何か?



僕は声優であるがしかしながらその作品には関わってわいないのだけれども宣伝の一環としてそのCMにナレーターとしてでわなくあくまで『福山潤本人』が約30秒の間に渡りこの作品を見ている方々に向ってPRするべく原稿を読むのでわなくフリートークをやれって事か?



成る程成る程
うんうん
面白い企画だねぇ



だが


正気か!?


なんなんだ

俺を芸人とでも思っているのだろうか

まぁ思われても仕方ないようなことはやってきたけれども

それにしてもだ!!

無茶ぶりにもほどがあるだろう!!

だから



やらせていただきます!!



え?ああホラやっぱりCMじゃん?無茶ぶりでも何でも必要とされるってのわやっぱり嬉しいっていうか照れるけれどやぶさかでは有馬温泉?ていうか駄洒落が言いたかっただけなのゴメンネ?でもでもやっぱりCMじゃん?巷でわかなりな人気の仕事CMじゃん?そういやCMの『C』と『M』ってなんの略なんだろうね?あ話がそれちゃってゴメンネ?何だっけ?ああそうそうCMだったよね?そりゃあやるよね?CMだものやるにきまってんんじゃんねぇ?だから頑張りますとも無茶ぶりでもCMを勿論おか…作品の為にね!!


てな感じで事務所にも快諾し詳細を聴く


どうやら事の経緯は

僕がその作品が大好きだったというのを前に話していたのを担当の方が覚えていたらしく

だったら面白いから僕に最近の映画のCMみたいな感じでやらせてみよう


とういことらしかった


やっぱり日頃から

アレが好きだコレが好きだ

って言っとくもんだね!!


るんるん気分(死語)で当日現場へ


実はこの時僕はこの仕事を甘く見ていた

大体にして

今回みたいな仕事をあまりした事がないというか自分的な前例がない事だから

さすがにガイドというかタタキというか

いわゆる


このまんまでなくてもまんまでもいいんで大体こんな感じの事を素っぽく言ってくださいな


的なものがあるだろうとふんでいたのだけれども

だけれどもだ


そんなものはなかった



あれ?俺やばくね?いくら作品が好きでも宣伝とそれはまた別の話だし

そもそも俺は出演もしていないわけだからコレ如何によっては作品に携わった方々に

マジで申し訳が立たないんじゃないじゃないのか!?

どうするよ俺!?


アドレナリン全開で思考を廻りに巡らせ考える

どうすれば俺がしゃべる事も趣向の一つとして成り立ち

その上ちゃんと宣伝としての効果とインパクトを与えることができるのか!?


出来るのか?

俺にそんな事が出来るのか!?

一体どうすれば…


『潤よ…潤よ…』


はっ!その声は…お師匠様!?


『久方ぶりです潤よ…かなり追いつめられているようですね潤よ』


お師匠様!私は今自分に自信が持てません!一体どうすればいいのでしょうか!?


『潤よ…事を急いては結果は生まれませんよ落ち着いて考えるのです』


駄目です!落ち着こうにもテンパっちゃって思考が

今日の御飯何にしようとか

今日すれ違ったおねいさんが美人だったとか変な方向にしか行きません!


『潤よ!そのおねいさんの胸は大きかったですか?』


お師匠様…どこにひっかっかってるんですか…


『冗談に決まってんだろうがこのビチクソが!何か知んねえけどテンパってっから冗談の一つでも言って解してやろうとしたんだろうがこの十円禿げ!』


そうとわ知らず済みませんでした!でも十円禿げではありません


『そんな事にイチイチ突っ込むんじゃありません…

潤よ…内なる声に耳を傾けるのです…答えはそこにあります…』


お師匠様…なんだかよく解りませんが有難うございます!

内なる声を聞きこの局面を必ずや打破して御覧にいれます!


『そうですそのテンションです…うまくいった暁にはギャラ7:3でお願いしますよ…さらばじゃ!』


せこいですお師匠様ぁ!!

はっ!?

お師匠様が今言った言葉…テンション?

テンション??

ハイテンション!?

内なる声とは全く関係ないが俺の持ち味は

無駄なハイテンション!

そうか!これだ!これしかない!!



僅か数秒の間の師匠とのやり取りで一筋の光明を見出した僕には

もう既に迷いは無かった


無駄なハイテンション状態になった僕

テンパっている状態とソレとが実はさほど大差ない状態である事に気づくのは

全てが終わった後になるのだが…


兎にも角にも

テンション上げまくった30秒

それは想像を超える戦いだった

まずは監督を始めメインスタッフの名前を呼び

何かでっかい声で言う!

そして何だかわからない状態になりながら最後に

主演の名前を叫ぶ!!


成功かどうかはわからない

ただ

インパクトだけわ勝った自信はある

きっとこれがボキャ○ラ天国ならば評価は

バカパクになっただろうな

思いつつ試練の仕事に幕を下ろしたのでした


果たしてあのCMをご覧になった方はどのくらいいたのだろうか

というかアレは採用されたのか?

宣伝として仕事が全うできたのだろうか解らないからこそ

ここでも記しておこうと思った今日この悟朗


ちなみに宣伝した作品は


『プラネテス Blu-ray Box』

幸村誠 原作

谷口悟朗 監督

SFアニメの名作


こちらのBOXは9月25日に発売されたばかりの

かなりお勧めな逸品




ちなみに僕が名前を叫んだ

主演の『ハチマキ』役は


田中一成さん(笑)