一昨年の誕生日の前日の事



なんと僕の携帯が真っ二つになってしまった



しかし不思議なもので半分になっても



携帯って繋がるんですよ



液晶が切り離されてしまった本体が

頑張ってバイブレーターで着信を知らせる様は




哀愁を感じますがね




着信が出来たところで

スピーカーは液晶部分に付いているわけですから



一方的に話す事しか出来ません



そんな事は電話に出なくても想像はつきますから出ませんし

なんか虚しいので切れるのを待つばかりです




次の日の朝一で携帯ショップに行き

修理に出そうと試みますが


当然ながら


真っ二つになった携帯電話を出すのが恥ずかしくなり



いや

あの~

ちょっとしたアレで

アレな感じに携帯がなってしまいまして

修理というかアレして欲しいというか

困ってしまってましてアレなんですよ



わけの解らない説明をしてしまうが

当然の如く

受付のお嬢さんからは



は?



と返されるだけなので

仕方なく無残な姿の携帯電話を差し出した



『あぁこれは大変ですねぇ』



と言った御嬢さんはやっぱり笑っていた





事情を説明し

何とか修理が出来るかを相談した後

データを吸い出すために暗証番号なんぞを打ち込んでくださいと言われ

液晶のなくなってしまった本体の電源を入れ

バイブの具合で作動ををつぶさに読み取り

慎重にタイピングをする



『あ、来ました来ました!!』



半ば面白がっているのが分かる口調ではあったがそこは無視して処理してもらう




本人確認が出来たところで



『あ!今日御誕生日ですね、おめでとうございます』



という

テーブル越しのお祝いが

僕の29歳を祝う最初の言葉だった





やはり

誕生日の前日に携帯がクラッシュしてしまう不運な輩はそうそういまい

明らかにお嬢さんの眼は珍獣を見るが如き表情と

明らかな同情の憐みを含んだ



優しい眼をしていた




すいません

ネタみたいな誕生日で…でも有難うございます



きっとプライドが折れる瞬間ってこんな時なんだろうなぁ

ってふと思ったりした僕は素直に言葉が出てこなかった




なんやかやして

修理は止めて新機種に変更してもらった僕は

不運ではあったが

携帯も新しくなったし

年も重ねたし

新しい一年の幕開けにはいい景気づけになったではないか


気を取り直して新着メールを問い合わせたら






新着メールはありません



の文字が












ハッピーバスデイあの時の俺