そう思い、余裕の無かった焦燥にかられた表情は氷上を滑る伊藤さんの様に涼しげな顔になった


なったのだ



なったその刹那!



すぐ入り口に差し掛かろうかというタイミングで
これまたすぐ左に顔を向ければサンバイザーをした50絡みの妙齢なキャディーさんの様な格好をしたオバハンがこれまた回覧板のようなバインダーを持って申し訳なさそうに


「あのう」

と声をかけてきた

『はひっ!』


気が緩みかけた矢先の見えないハイキックに素っ頓狂な声を上げてしまう

「な、なんすか」


内股を入れ替えながら聴く


『あのぅ、渋谷1〇9調べのアンケー…』

「結構です!」


皆まで言わす前に断る

当たり前だのクラッカーだ
膀胱の攻防はもう可及的速やかな撤退を告げている
そんな案件に応える余裕など無い


「あ、あの」

なお食い下がるキャディーモドキさん

「答えて頂きますと図書券1000円分お渡し出来るんで…」

『結構ですっ』

金券に釣られて漏らす訳にはいかない故、袈裟斬り御免


そうやってキャディーっぽいサンバイザーに別れを告げる様に背を向け様とした


その時!


完結編に続く