例えば水がいったん堤を破った以上、広がるところまで広がらねばとどまらない。

人間の情熱も、そういう自然現象と同様であり、理由もなく意味もなく水の勢いのごとく奔流し、瀰漫し、山麓に至ってやっと阻まれるが、天日に干されてしまうか、そのいずれかの限界にゆきつくまで滔々としてとどまらないであろう。

              司馬遼太郎 夏草の賦(上)