「洗浄の口」とはなんぞや?

 

 フランス語のBouches de lavageを日本語に訳すと「洗浄の口」となる。直訳だと意味の分からない言葉だが、「道路清掃用水道栓」のことだ。

 

 特に朝早くパリ市内を歩くと道から噴き出ている水を見掛けることが多くある。この水道栓(排水口)がBouches de lavageである。これは道を掃除するための水であるが、この水道栓を清掃作業員が鍵で開けると多量の水が噴き出る。水は、その後道路脇のゴミを流して、地下の下水道網に流れ落ちる。道路の傾斜を利用して水がゴミを流す仕組みだ。

 

道路の側溝に噴き出る清掃用水

 

 

 最近は、清掃力を増すために、放水しながらゴミを回収する路面清掃車や給水車からホースで放水してゴミを流すという方法も取られている。

 

給水車の放水で清掃

 

 これらの水は、オー・ド・パリ(パリ市の自治公共サービス企業)が管理する二次水道網からの非飲用水で、この飲用に適さない水は、側溝を清掃するほか、公園や庭園の噴水や滝にも使われている。この非飲用水の水源はアヴル川・ロワン川・リュナン川・マルヌ川・セーヌ川の上流など、様々な地域の水によって構成されている。

 

 パリには、地上の道とほぼ同じだけの地下水道があり、地下水道にも地上道路と同じ道路名が記されている。

 

 19世紀、セーヌ県知事のオスマンにパリの上下水道システムの責任者として任命されたウージェーヌ・ベルグランは、この壮大な事業に第ニ帝政の初期から1878年に亡くなるまで身を捧げることになる。1869年には、彼が建設した下水道は、1852年の4倍の長さである560キロメートルになった。以降、現在は全長約2600キロメートルに及ぶ。

 

 地下水道というと、有名なヴィクトル・ユゴーの小説「Les Misérables(レ・ミゼラブル)」で、ジャン・バルジャンが1832年の六月暴動のバリケードからマリユス青年を背負ってセーヌ川に逃がれる「下水道の逃避行」を思い起こされる読者もおられるのではないだろうか?!