エッセイ

テーマは「火星移住計画」

 

 7、8年前、2030年代前半に人類は火星に人を送るだろうとのニュースを聞いて、胸の高まりを覚えたことがある。私自身、若い時、「世界旅行に挑戦」という経験があるからだ。今や私たちに続く若い人たちの時代なので、是非にとも火星まで足を延ばしてもらいたいものだが、これには危険が伴うのが当然だ。というのは、火星まで半年の片道の旅で、船内ではできる限り放射線を浴びないように設計されているものの、それでも、多量の放射線を浴びるリスクは否定できないし、慣れない火星での生活も強いられるので、そう簡単には行かないであろうと想像する。

 

 人間はなぜ危険を顧みず冒険をしたがるのだろう? 人類のためという大義名分もあるだろうが、人間の内なる欲求に逆らえない挑戦心、探求心、好奇心が自分を追いやるのであろうか。移住のもう一つの最大理由として挙げておかなければならないのは、人口爆発、地球温暖化による異常気象、生態系や食糧生産の乱れ、巨大隕石の衝突、核戦争、疫病、氷河期などによって住めなくなる地球になるからだ。人類には山積みの問題が将来待ち構えている。しかし、何よりも大切なのは惨事に備えた人類の“種の保存”のためと言えるだろう。

 

 アルテミス計画というのを小耳に挟んだことがあるだろうか。米国が提案する、月面有人探査と将来の火星探査を目指す国際宇宙探査計画だ。先日、日本でも新たな宇宙飛行士の募集が始まったばかりで、2030年代には日本人宇宙飛行士が月面に着陸する可能性もある。

 

 オランダに拠点を置く民間非営利団体マーズワンが、十年程前、2025年に人間を火星に移住させる計画を発表した際、移住希望者を募集。その後修正され、2015年時点のロードマップでは無人探査機は2026年、最初の植民者の到着は2031年となっている。

 

 起業家でエンジニアでもあるイーロン・マスク氏は「あと5年半以内に人類が火星を訪れるだろう」と発言して、火星と地球が最接近する2024年を目標とし、2026年までには火星までの有人飛行を成功させると豪語する。最終的には火星に恒久的な基地を作って、人が暮らせるようにするのだ、と。

 

 先の新型コロナの影響で実現には難しいものがあるが、NASAも2050年までには移住計画を実行に移したい考えだ。

 

 ところが、最近の研究によると十分な酸素を得るための二酸化炭素が火星にないということがわかった。計画が頓挫する可能性を孕んだ調査結果にマスク氏はどのような解決策を見出すであろうか。

 

 私にはもう火星に行こう、あるいは、住もうとか、そういった高望みはないが、孫辺りになるとその望みは高望みでもなんでもなく自然の成り行きになろうことが理解できる。子孫が火星で生まれ育ち地球にやってきて「ワレワレハ、火星人ダ!」という日が来ないとも限らない。私の場合で言うと大阪から上京して「私は関西人だ」というのに似ているし、世界に出て「私は日本人だ」というのと同じかも知れない。

 
火星