国家公務員の再就職先を紹介する総務省所管の「人材バンク」の仲介業務を、民間の人材派遣大手「パソナ」(東京都千代田区)が3月上旬に受注していたことが分かった。政府の公務員制度改革では、渡辺公務員制度担当相が「省庁による天下りあっせん」を全廃し、拡充した「人材バンク」に一本化する意向を示している。ただ、パソナでは、昨年9月まで総務相だった竹中平蔵慶大教授が2月に特別顧問に就任しており、天下り規制をめぐり自民党の反発が一層、強まりそうだ。

 総務省の「人材バンク」は再就職あっせんのノウハウに乏しく、設置7年間で1人しか仲介実績がない。省庁あっせんを全廃し、「いきなり何百人も対応しろと言っても無理だ」(政府高官)として、現行の体制で対応できるかどうか疑問視されている。

 同省は昨夏から再就職先探しの民間委託を検討。今年2月に企画競争を実施して複数社が応募し、今月7日にパソナが選定された。試験的な位置づけで4月1日から1年契約とし、求人企業の開拓や公務員の教育訓練などを担う。国との契約は無償だが、紹介先企業から紹介料を受ける。省庁あっせん全廃後も提携が続けば、大規模委託につながる可能性がある。

 パソナでは昨夏、石原信雄元官房副長官を代表に、各省事務次官経験者で構成する助言組織を設置。今年2月に竹中氏を特別顧問に迎え入れた。求人企業側の需要をリスト化し、すでに約400項目を整理。南部靖之社長は「我々は公務員の才能を細かく分析するプログラムをつくる」と語り、民間委託で公務員の再就職先の選択が広がると自信を見せている。

 一方、竹中氏は総務相だった昨年3月の国会答弁で「(天下りの)最大の問題は官庁があっせんすること。官庁があっせんする仕組みをなくすことが一つの重要なポイントとなる」と指摘し、渡辺氏と同様の考えを表明。総務相退任後に民間側から天下り対策に関与した形となる。

 安倍首相は15日、「透明な形で能力に応じて就職先が決まっていくことにもなる」と記者団に語り、人材バンクの活用に理解を示した。外注は人件費など経費を減らせるメリットもあるが、もともと天下り規制には自民党や省庁の反発が強い。前総務相が特別顧問を務める民間企業の受注で、さらに抵抗が強まることも予想される。

http://www.asahi.com/job/news/TKY200703150306.html