平成20年度の新卒採用計画を拡大する大手企業が相次いでいる。シャープが19年度に比べて大卒を9割近く増やすなど全体で1000人を採用するほか、三井住友銀行が過去最高の1600人を予定している。また、KDDIも前年度より3割程度増やす。好調な企業業績を背景に中核事業の強化を図るほか、団塊世代の大量退職が始まる中で技術力の水準維持を目指す。「売り手市場」化が進むため、優秀な学生の確保に向けて採用方法を工夫する動きも広がっている。

 

シャープ1000人、三井住友銀1600人

 シャープの新卒採用(大卒のみ)は前年度比87%増。高卒や中途を含めると採用予定数は1000人に達し、16年ぶりの大量採用となる。主力の液晶テレビなどで海外展開を推進しており、企画や営業などの増員に向けて事務系も前年度比2・4倍に拡充する。

 ソニーも19%増の500人(大卒)を予定。「液晶テレビやデジタルカメラなどの成長分野で優秀な若手技術者を育成したい」として好調なデジタル家電が採用拡大に拍車をかけている。

 国内の製造業では、団塊の世代が大量退職する「2007年問題」で技術力の低下が懸念されており、採用拡大で技術水準の維持を目指す。

 富士電機ホールディングスの新卒採用は前年度並みの330人(傘下の一部事業会社含む)。19年度で前年度比65%増という大幅な採用増に踏み切ったが、20年度も高水準の採用を続ける。同社では団塊世代の割合が高いため、採用担当者は「コンスタントに採用を続けることで、事業規模や競争力の低下を防ぎたい」と話す。

 三菱重工業や石川島播磨重工業でも2007年問題を採用拡大の理由に挙げる。高卒などの技能系も含めると、三菱重工は19年度比14%増の1500人、石播は同33%増の380人程度の採用を計画している。

 こうした採用の拡大はメーカーばかりではない。イトーヨーカ堂は出店増など業容拡大に伴い、大卒を前年度2・7倍に増やして200人採用する。KDDIも3割程度採用を増やし、携帯電話や光ファイバーなどの技術開発の強化を進める。三井住友銀行は過去最多となる1600人を計画している。業績回復を背景に、個人取引など重点分野を中心に人員配置を手厚くする。

 即戦力を期待して、中途採用に力を入れる企業も増加。三菱地所は20代後半から30代前半の就職氷河期世代の補強を進める。新日本製鉄は若年層の減少に対応し、操業・整備系の400人の採用枠のうち、100人を中途採用で補う意向だ。

 各社が採用拡大の動きを強めていることで、学生側が有利な「売り手市場」の傾向が一段と強まっており、「採用確保が難しくなっている」(セブン&アイ・ホールディングス)との声も漏れる。このため、通常の採用活動に加え、新たな方法で優秀な学生を確保しようという動きも出始めた。

 三菱東京UFJ銀行は、海外業務の魅力を体感してもらうため、3月1日に香港支店でインターンシップ(短期業務体験)を実施。応募した学生から15人を選抜し、渡航費や宿泊代は銀行側が負担した。日本航空は今年の新卒者向け説明会を前年より7都市増やして26都市に拡大。福島や盛岡、那覇など地方都市の開催を増やすことで、優秀な学生の発掘を目指すことにしている。


http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070305/sng070305000.htm