天国から来た大投手 十二、ワンダーボーイ 210 | 六月の虫のブログ

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森次郎がジュディに電話をしていると、誰かがドアをノックした。森次郎が携帯を片手にドアを開けると、キャチャーと三塁手が立っていた。「モリ、何してたんだよ」とキャッチャー。「ガールフレンドに電話しているんだけど」と森次郎が答えた。「飯食いに行かない」と三塁手が誘ったので、「シュア」と言うとジュディに「またかけなおす」言って電話を切った。

森次郎が登板する試合前、浩輔は、キャッチャーに試合前半はスライダーを決め球に、後半はサークルチェンジを多用すると伝えるよう森次郎に指示した。浩輔は、自分が森次郎に乗り移っている間は自分の落差のあるスライダーを、森次郎が投げる時は、彼が得意なサークルチェンジを投げ分けることで相手打者達を翻弄できると考えた。この試合で森次郎のボールを捕るのは、昨晩夕食をともにし、一緒にシャーロットから上がってきたキャッチャーだ。キャッチャーとの打ち合わせが終わると、森次郎はバッティング練習に向かった。ピッチャーの森次郎は四番を任され、指名代打なしの異例の布陣となった。ピッチャーで四番ということで、全国ネットのスポーツチャンネルESPNも中継にきた。日本のテレビも取材に来ていた。

初回、森次郎がマウンドに上がると、浩輔が乗り移った。浩輔は三振よりゴロを打たせるよう心がけた。とにかく低めにボールを集めた。右打者に対しては内角にカットボール、外角にスライダーでカウントを稼ぎ、インハイの速球で仕留めるパターンが通用した。浩輔が思った以上に、相手打者は大振りだった。結局、浩輔は六回までに十二奪三振と予想以上に三振を取った。打つ方でも、森次郎は二打数一ホームラン、一四球と活躍した。試合も五回を終えて、六対ゼロでナイツがリードしている。浩輔は完全試合のまま、森次郎にマウンドを譲った。




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