天国から来た大投手 十二、ワンダーボーイ 209 | 六月の虫のブログ

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翌朝、三人はアムトラックでシャーロットに向かった。シャーロットの駅に着くと、ナイツの広報担当が三人を出迎えてくれた。担当者は三人を球場近くのモーテルに降ろすと、一時間後に迎えに来るからユニフォームに着替えて待っているよう指示した。前日、森次郎と三塁手は先発を言い渡されていた。

森次郎は練習の時からチームメイト達を驚かせた。ノックを受けると、マリナーズのイチローのようにボールを背面キャッチするし、外野フェンスに軽々とよじ登る。何よりグランドのみんなを驚かせたのは、ライトの守備に着いた森次郎が一緒に上がってきた三塁手に一直線にボールを投げた時だ。森次郎の投げたボールは低い弾道で直接三塁手のグラブに納まった。受けた三塁手も唖然としていた。森次郎は試合でも観客を含めた皆を驚かせた。打っては、ホームラン二本を含む四打数三安打五打点で、守っても強肩で、皆を二回唸らせた。一度目は、ヒットで二塁を狙った選手を二塁で刺し、二度目は森次郎の守るライトにワンアウト三塁でフライが上がりタッチアップしようとした選手を本塁でアウトにした時だ。試合もナイツが圧勝した。試合後、監督は「モリ、ナイスゲーム。四日後、君がマウンドに上がる時を、楽しみにしているよ」と握手した。

移動日を挟んで次の試合でも森次郎はチームに攻守で貢献した。ピッチャーとして、先発する前日の試合は監督の気遣いもあり、休養することになった。休養といっても試合に出ないだけで、ベンチには入って試合を見た。浩輔はバックネット裏で、相手チームの打者の癖などを観察していた。コーチが渡してくれた相手チームの選手達のデータなどを記したスカウティング・レポートは、見ている。浩輔は、データに現れない相手選手達の現在の調子などを見ているのだ。試合が終わってモーテルに戻ると、森次郎は浩輔と話し合う。浩輔は、まず森次郎に森次郎の観察結果を報告させる。森次郎の報告が終わった後、浩輔が足らない部分を付け加える。最近は、浩輔が付け足す分が少なくなってきている。それだけ森次郎が成長していると言える。でも、森次郎は「浩輔の観察力、分析力は凄い」といつも感心させられる。この打ち合わせが終わると、浩輔はジミーへの報告に戻る。




     シャーロット・ナイツの球場(フリー画像より)