天国から来た大投手 十一、卒業 189 | 六月の虫のブログ

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 「モリ、紹介してくれる」と言いながら、ジュディがバスルームから出てきた。「ジュディ、裕香さん。裕香さん、ジュディ」と紹介した。二人は握手をすると、裕香はソファに、ジュディは床に座っている森次郎の横に座った。裕香は「ジュディ、何を飲む。ビール?ワイン?」と訊いた。ジュディは「ワインをいただくわ」というとグラスを三つ持ってきた。「モリ、乾杯はワインでしましょう」とジュディは裕香が言う前に言った。裕香はワインを注ぐと、「ねえ、ジュディ、何に乾杯する」とグラスを手に持った。「んん、裕香さんが、いい人とめぐり会えますように、はどう?」とジュディが言うと、「みんなの幸せと活躍に乾杯でいいじゃない」と森次郎が割って入った。三人はグラスを合わせて乾杯した。森次郎は、裕香に明日の取材の予定や段取りについて質問した。裕香は、一通り説明すると「ジュディ、私とモリはどんな関係だと思うの」と訊いた。森次郎は「酔っ払う前にシャワー浴びてくる」とバスルームに向かった。

 森次郎がシャワーから出てくると、二人の笑い声が聞こえてきた。森次郎が「何、笑っているの」と訊くと、二人は顔を見合わせ「モリの寝顔が可愛いって言っていたのよ」とジュディがウインクした。裕香は「遠距離恋愛は難しいわよ、ジュディ。モリがシカゴに行ったら私にもチャンスがあるかも」とジュディを突っついた。ジュディは「ノー・チャンス」と一蹴した。二人は意気投合したようだ。裕香は「いいわ、もう少しの間、モリを貸してあげる」と立ち上がって、森次郎に抱きついた。

 三人は、ビーフジャーキーをかじりながらビールを飲み始めた。ワインは、森次郎がシャワーから出てきた時には空になっていた。「裕香さん、浩輔ってどんな人だったの」とジュディが尋ねた。裕香は「野球馬鹿よ。浩輔は年がら年中、野球のことばかり考えていたわ。彼の場合、職業も趣味も野球。他のものにはまったく興味がなかったみたい。私を除いてはね」とウインクした。「彼の夢は、大リーグで活躍してワールドチャンピオンになることで、そうなったら、チャンピオンリングを私にプレゼントすると約束してくれたのよ」と続けた。「もちろん、大リーグに入ったからといって、ワールドチャンピオンになるのは難しいと思うわ。イチローや野茂も松井もまだだもんね。浩輔はその夢の舞台に立つまでに死んじゃった」と目を伏せた。「その夢をモリが叶えようとしている。これは偶然なの」とジュディは森次郎を見た。裕香は「偶然でしょ。だって、モリは浩輔に会ったことないもの」。森次郎は静かにうなずいた。「でも、私がモリを好きになったのは、彼のどこかが浩輔とダブったからだと思う。物事に純粋なところかな。野球に関しては、モリは浩輔に比べてクールだよ。女性に関してはホットだけどね。ジュディ、あなたもそう思うでしょ」と裕香は笑った。




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