天国から来た大投手 十、レッツ・プレー・ボール 147 | 六月の虫のブログ

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いよいよ野球チームのトライアウトが始まった。コーチは体重が百キロをゆうに超える巨漢のミスター・ズィナニだ。アメフトのヤング・コーチは皆にファーストネームで呼ばれていたが、ミスター・ズィナニは皆に『ミスターZ(ズィー)』と呼ばれていた。トライアウトには二十数人が参加していて、最終的にチームに残るのは十八人だけだ。デニスもルースターもトライアウトに参加していた。森次郎は、浩輔とのトレーニングを続けていたので、動きはいい。ピッチングは四ヶ月くらいしていなかったが、不安はなかった。不安なのは、果たしてキャッチャーが森次郎の球を受けられるかどうかだった。森次郎は、ミスターZにその旨を相談した。球速、百マイル弱で投げる森次郎の速球や鋭く曲がる変化球を捕れるのか不安だった。

ミスターZは、キャッチャー候補の選手を呼び寄せると、森次郎とキャッチボールするように言った。森次郎は、ゆっくりウォームアップすると、七分の力でキャッチャー候補のミット目掛けて投げ込んだ。キャッチャーは恐がって、腰が引けている。森次郎は、ミスターZに「今のは七十パーセントの力で投げたものです。これ以上の力で投げたり、変化球を投げるのは危険だと思います」と落胆した表情を見せた。横で見ていたデニスが「モリ、俺が受けるよ」、「ミスターZ、いいですか」と二人の前に来た。

デニスは難なく森次郎の速球を捕った。「これで七十パーセントなんてすごいよ、モリ。野球でも州大会に行けるかもな」と驚いた。森次郎は「僕の変化球が捕れるかどうかまだ心配はあるけど、デニス、お前なら捕れるよ」と微笑んだ。ミスターZもホッとしたようだ。森次郎はまだ不安だった。トライアウトが終わると、練習は連係プレーなど実戦形式なものが多く、練習時間自体も短い。その後は個々の選手が、個々にトレーニングするだけだ。日本のように皆一緒にランニングや腕立て伏せはしない。球拾いも皆でやる。バッティング練習がしたい選手は、体育館の隅にあるバッティングケージでマシンを相手に打ち込む。ウエートトレーニングも個々に行う。一人でできる練習は個々にするのが前提で、ノックを受けるのも一人ずつだし、待ち時間はほとんどないから練習時間は短くなり中身は濃い。




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