天国から来た大投手 十、レッツ・プレー・ボール 145 | 六月の虫のブログ

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十、 レッツ・プレー・ボール

 

 森次郎は、ベースボールシーズンが始まる前に、運転免許をとることにした。放課後、コーチ・ウイルソンが教えるドライバーズ・エデュケーション(略して、ドライバーズ・エド)を受けている。交通法規は分かりやすくビデオで学ぶ。授業の終わりには、ショートクイズがある。森次郎は、学科試験を満点で合格すると、仮免許が与えられた。実地はコーチ・ウイルソンが同乗して、モントレーやカーメルで練習した。実地試験で満点をとると、コーチ・ウイルソンが夕食をご馳走してくれるとのこと。ただ、彼が教えた五年間で、満点をとった生徒は二人しかいないらしい。森次郎は、九十四点で見事に合格した。免許は取ったものの、運転する車はない。

 

金曜日の夕方、森次郎は三週間ぶりにジュディに会いに行くため、バスに乗った。ジュディは、いつものようにモントレーまで来ると言ったが、いつも彼女に負担ばかりかけられない。月曜日には森次郎に奨学金を約束してくれているスタンフォード大学にインタビュー(面接)を受けに行くことになっている。それに、ジュディの両親も森次郎に会うのを楽しみにしていた。サンフランシスコのバスターミナルでは三人そろって、森次郎を出迎えてくれた。森次郎は「ハイ、マーサ」と言ってジュディの母親とはハグと頬にキス、「ハイ、ジョン」と親父さんとは固い握手を交わした。ジュディとは軽く抱き合った後、唇にキスをした。

四人は、フィッシャーマンズ・ワーフにあるシーフードレストランで食事をした。話題は、バスケットボールシーズンのこと、ネイサンのことや日本のテレビによる取材のことなど尽きることはなかった。ジュディは、森次郎がスタンフォード大学とイリノイ大学の二校のどちらに決めるのか気になっていた。スタンフォード大学は、ジュディや美盤が通っている。イリノイ大学は森次郎の父親が卒業した大学で、小さい頃からロバートソン高校とイリノイ大学は森次郎にとっておなじみの学校だった。イリノイには父親の友人も多く住んでいる。それに、森次郎を一番評価してくれた大リーグの球団は、イリノイ州シカゴが本拠地のホワイトソックスだった。翌週末は、イリノイに行く予定だ。

 ジュディは、両親に森次郎と一緒にイリノイに行ってもいいか尋ねた。ジョンは「いいよ」と即答した。ジョンは「モリ、君がスタンフォードを選んでくれることを願うよ。もちろん、ホワイトソックスとの話も聞いている。ジャイアンツかアスレチックスでもいいじゃないか」と続けて、微笑んだ。森次郎は「ジョン、大リーグ挑戦は二年で区切りをつけるつもりなんです。その後は、まだ決めていませんが、近いうちに報告できると思います」と言った。




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