木曜日の練習の後、森次郎は「ルー、明日の試合、ネイサンにサイドラインにいてもらったら、まずいですか」とヤングに訊いた。ヤングは「いいよ。俺もネイサンがいてくれると心強いよ」と答えた。ネイサンは目いっぱいジャンプして、森次郎とハイタッチを交わした。
金曜の夜、スタジアムは両校の応援団で一杯になった。この試合の勝者が、州大会に出場することになる。ロバートソン高校は、圧倒的な強さで試合を支配した。前半を終えて、二十八対三と大差をつけている。この頃になると、森次郎は浩輔の力を借りなくても、プレーが出来るようになっていた。ただ、一生懸命指示を出してくれる浩輔に感謝していた。浩輔もフットボールをプレーすることが、野球にもプラスになると考えるようになっていた。
ハーフタイムは、両校のマーチングバンドがフィールド一杯に行進しながらポップスを演奏している。森次郎達、選手はロッカールームでコーチのヤングから後半の戦い方の指示を受けている。コーチの指示が終わると、ネイサンが口を開いた。「皆、まだ勝った訳じゃないんだ。油断せずに、奴らを徹底的にぶちのめしてやろうじゃないか」。すると、選手全員が口々に「勝つんだ。勝つんだ」を大声で連呼し始めた。最後にヤングが「よぉし、レッツゴー」と言うと、選手達は勢いよくフィールドに飛び出した。
結局、ロバートソン高校は、相手チームを圧倒し、五十六対十で州大会進出を決めた。試合の後、ネイサンは森次郎に「日曜日、僕達、タイニーリーグの試合があるんだけど、観に来てくれる」と尋ねた。森次郎は快く観に行くことを約束した。
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