天国から来た大投手 五、注目の的 68 | 六月の虫のブログ

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決勝戦の後、裕香は監督の池崎にインタビューした。裕香の最初の質問は「なぜ、早慶高校野球部はこんなに強いのか」だった。池崎は森次郎の加入がチームに良い影響を与え、他の選手たちが自分達の力を極端に伸ばしたことがチーム力向上の最大の要因だと説明した。そして、相手チームが森次郎や克也とまともに勝負してくれたことが嬉しい誤算で、試合運びが楽になったのも確かだ。池崎は「例えばキャッチャーの城田は吉野のボールを捕るために、ピッチャーにマウンドの二、三メートル前から投げさせたり、バッティングセンターで百五十キロの球をホームベースの二、三メートル前から捕る練習をしていました。これらの練習によって動体視力が向上したのだと思います。彼は吉野と一緒にウェートトレーニングもやっていましたから、パワーも相当アップしたと思います。ピッチャーの沢口もウェートトレーニングで球速が随分速くなりました。彼は吉野に習ってチェンジアップを覚えて、投球の幅が広がりました。他の選手達も三人の姿を見て、自分達の役割や実力を把握できたのが良かったと思います」と説明した。裕香は「吉野君のどこがいいのだと思いますか」と訊いた。池崎は「一番は彼の素直さです。彼は私を信頼してくれています。また、彼の頭の良さはぴか一です」と答えた。裕香は池崎の言葉に何度もうなずいた。裕香もそのとおりだと、池崎の言葉を聞きながら笑顔が出た。

裕香の携帯にメールが届いた。「監督とのインタビュー観ました。僕のことを質問した時、なんかまるで母親のような感じで監督の話を聞いていなかった?お母さん!モリ」とあった。裕香は、ディレクターに同じことを言われ、苦笑した。

森次郎はますます注目の人となった。ピッチャーとしてプロになるか、バッターとして活躍するか、マスコミは森次郎の意志とは関係なく騒ぎたてた。ただ、マスコミも森次郎の早慶大学への進学が確定的で、高校卒業後のプロ入りはないと報道するようになっていた。




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