前回はビル・ウォルシュが起こしたイノベーション、新しいパス・システムの構築について書きました。
http://ameblo.jp/junebugmaymolly/entry-12003463212.html
今回は、その新しいパス・システムを完全に機能させるために必要な仕組みに関するイノベーションについて書きます。それがマイケル・ルイスの小説、『The Blind Side(ザ・ブラインド・サイド)』の題名となっているものです。
1987年、ウォルシュは調子が上がらないエース・クォーターバック、ジョー・モンタナに代わって、スティーブ・ヤングを先発クォーターバックに指名します。
「他のチームにいたときにヘッドコーチは、レシーバーがオープンになるまでボールを投げるなと言うんだ。そんなことをしていたら、敵チームの奴ら全員がやってきてボクはボロボロにされちゃう。でも、このチーム(49ers)では最初に見つけたオープンなチームメイトにボールを投げればいいだけだ」とヤングは言う。
1960年代、パスがインターセプトされる(途中で敵に取られる)確率は6%で、ランニング・バックが走ってボールを落とす確率は3%でした。だから、ヘッドコーチはより安全なランを選ぶことが多かったのです。
1960年、NFLのクォーターバックは7583のパスを投げ、そのうち49.6%を成功させた。インターセプションは470回で6.7%の確率でした。
2005年になると、NFLのクォーターバックは16430のパスを投げ、そのうち59.5%を成功させました。インターセプションは507回で3.1%の確率に激減したのです。
1991年にビル・ウォルシュのパス・システムを多くのチームがまねるようになったのです。
さて、このウォルシュのパス・システムをより完璧なものとするのに必要なのが、ザ・ブラインド・サイド(死角)のケアです。
右利きのクォーターバックの場合、ボールを右手に持ち、投げようとするときには体は右側をむきます。そのとき彼の左側は死角になります。左側まで見ようとすると投げられないからです。
敵のディフェンス、ラインバッカーがクォーターバックの左から来れば、クォーターバックは気づきにくく、サック(タックルで倒される)される可能性が高くなります。
そこで重要になるのがオフェンスの、クォーターバックの左側を敵のラインバッカーから守ってくれるレフト・タックルの役割です。
ジョー・モンタナがあれだけパスを通せたのは、彼を敵から守ってくれたレフト・タックル、スティーブ・ウォレスのおかげです。モンタナはウォレスが彼のブラインド・サイド(死角)を守ってくれているから安心してパスが投げられたのです。
ウォルシュのパス・システムもウォレスのようなレフト・タックルなしには機能しないのです。レフト・タックルは、チームで一番高給取りのクォーターバックを守るのです。スティーブ・ウォレスはレフト・タックルの価値を知らしめて、裏方から準主役まで押し上げたのです。
どんなに優秀なクォーターバックも、ラインバッカーへの恐怖感を抱いていたらパスは投げられません。
1985年、かつてのワシントン・レッドスキンズの名クォーターバック、ジョー・タイズマンは、ニューヨーク・ジャイアンツのラインバッカー、ローレンス・テイラーにサックされれば大けがをして再起不能にされました。このとき、レッドスキンズのレギュラーのレフト・タックルはサイドラインに退いていて、代わりに小柄な選手がレフト・タックルのポジションについていたのです。
このゲームは私もテレビで見ていたと思います。解説者が「タイズマンの脚の骨が飛び出ています」とすごいけがだということを言っていたのを覚えています。
ビジネスでもそうですが、主要部分を効果的に機能させたかったら、そうできる環境を整えなければなりません。
タイズマンのような悲劇を生まないためにも、ローレンス・テイラーのようなラインバッカーからクォーターバックを守るレフト・タックルが必要なのです。
まだ映画、『The Blind Side(ザ・ブラインド・サイド)』(邦題『しあわせの隠れ場所』)は見ていませんが、ぜひ見てみたいと思います。『マネーボール』も小説が先で、映画が後でした。
野球の『マネーボール』に関する記事:
『映画”マネーボール”中小企業が大企業に勝つ方法』
http://ameblo.jp/junebugmaymolly/entry-11525918584.html
『もう一つのマネーボール レッドソックス編』
http://ameblo.jp/junebugmaymolly/entry-11668825660.html
『もう一つのマネーボール ジョー・マドン編』
http://ameblo.jp/junebugmaymolly/entry-11545543571.html