十、レッツ・プレイ・ボール (つづき)
ネイサンもトライアウトで、パンサーズの八番目の選手に滑り込んだ。ネイサンのポジションはセカンド(二塁手)だ。九番目の選手は、ライトに回った。控えに三人もいる。浩輔は常々「ネイサンはしっかりキャッチボールができるから、すぐに上達するよ」と言っていた。ネイサンは大喜びで「背番号はヤンキースのジーターと同じ二番をもらった」と森次郎に報告した。森次郎は「ジーターはショートストップだけど。セカンドならシカゴの井口の十五番はどう」とからかった。ネイサンは「実は二番しかボクのからだに合うユニフォームがなかったんだよ」と肩をすくめた。
開幕戦には、多くの生徒や父兄が観戦に訪れた。野球の試合では異例の数の観客が集まった。スタンドには森次郎の代理人のジェリー・マグワイア、ホワイトソックスや他の大リーグ球団のスカウトが数人、地元のマスコミやサンフランシスコ駐在の日本のエヌビーシーテレビの記者もいる。ネイサンとメグも森次郎と目が合うと、手を振っている。スカウトたちはスピードガンを持っている。森次郎の球速を測るためだ。森次郎はスタンドにいるメグとネイサンに微笑むとゆっくりマウンドに上がり、キャッチャーのデニス相手にピッチング練習を開始した。ピッチング練習でもスピードガンは、時速九十三マイル、百五十キロ弱を示していた。
浩輔が森次郎に乗り移った。浩輔は、相手チームの一番バッターに第一球を投げた。ボールはバッターの胸元をえぐるようなムービングファストボール。相手バッターは、驚いてのけぞった。ボールがデニスのミットに収まってから二秒ほどして審判の手が上がった。「ストライク」。スタンドがどよめいた。スカウトたちのスピードガンは九十八マイル、時速百五十八キロを示していた。デニスは顔色一つ変えず、マウンドの浩輔にボールを投げ返した。二球目も同じく、内角にムービングファストボールを投げ込んだ。バッターは、ビビッてしまって手も足も出ない。三球目は外角低めにムービングファストボールで三振。二番バッターも三番バッターもムービングファストボールだけで、三球三振に打ち取った。
つづく・・・
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