天国から来た大投手 Vol.28 | 六月の虫のブログ

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第二部 吉野 森次郎


二、夢の伝承者 (つづき)


 次の朝、森次郎は早く目覚めた。彼の目覚めに合わせるように浩輔が現れた。浩輔は「おはよう。昨日はゆっくり休めたかね」と言うと、この日の練習メニューについて説明した。一時間ほどランニングした後、シャワーを浴びてスポーツクラブに向かった。スポーツクラブではウエートトレーニングをして、プールで水の中を千メートル歩いた。プールで歩いていると西洋人の紳士が、英語で話し掛けてきた。森次郎が英語で答えると、浩輔は驚いて「モリ、君は英語がしゃべれるの」と思わず訊いた。森次郎は「一応、日常会話くらいは話せます。映画『スターウォーズ』の台詞は英語で全部暗記しています」と言った。浩輔は森次郎ならアメリカでも言葉で苦労することはないし、百パーセント野球に打ち込めると思った。浩輔は「日本語も満足にしゃべれない奴が多いのに、英語を教える前にもっとちゃんと日本語を教えろよと思っていたんだけど、そうでもないのかな」と森次郎に言った。「外国語をマスターしようとすると、まず聞くことから始まります。聞くことができないと、話せません。赤ちゃんも、お母さんの言うことがある程度理解できるようになっても、しゃべれるようになるには時間がかかります」と森次郎が言うと、浩輔は感心したように黙ってうなずいた。「外国語を聞こうとする過程で、コミュニケーション能力が身に付くのです。外国語も話せる人は、聞き上手、つまりコミュニケーション能力に長けている人が多いのです」と森次郎は続けた。「これはうちの親父の受け売りですけどね」と締めくくった。


 つづく・・・



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