天国から来た大投手 Vol.26 | 六月の虫のブログ

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第二部 吉野 森次郎


二、夢の伝承者 (つづき)


 森次郎は最初のデパートで家族へのプレゼントを買い終えた。弘子は、最初のデパートでは何も買わず、二軒目のデパートに行った。彼女はそこで、親父さんと弟へのプレゼントを買うと、最初のデパートに戻ってお母さんへのプレゼントを買った。その後、弘子はちょっと買い忘れたものがあるからと、二軒目のデパートに戻った。彼女は、森次郎に上の階のイタリアンレストランで待っているように言って、その場を去った。森次郎はこのすきに弘子へのプレゼントを買うことにした。彼は、マフラーと手袋のセットを買うと、イタリアンレストランの前の行列で弘子を待った。

 弘子と森次郎は非常に長い付き合いだ。早慶の幼稚舎からずっと一緒だ。彼女とは家族ぐるみの付き合いをしていた。森次郎にとっても弘子は親友であり、なくてはならない存在だ。弘子にとって森次郎も同様の存在だ。でも彼らは自分たちが恋人同士だと思ったことはない。彼らはともに、自分たちは「いい関係」というだけでそれ以上意識したことはなかった。弘子が戻ってきたときには、ちょうどあと二組で席に着けるところだった。

 食事を終えると、勘定はいつもどおり割り勘にして、レストランを出た。森次郎は、いつも弘子には悪いと思っていた。弘子も身長が百七十三センチと大柄でよく食べる方だが、森次郎にかなうはずがない。森次郎が余分に出すといっても、彼女はそうさせてくれない。次に、二人は映画館に向かった。弘子のお薦め、『サイダー・ハウス・ルール』を観に行った。弘子は原作の本をすごく気に入って、森次郎をこの映画に誘ったのだった。森次郎もこの原作者、ジョン・アーヴィングの『第四の手』を読んで、彼の他の作品にも興味を持っていた。映画のあと、弘子が「とてもアーヴィングでしょ」と言うと、森次郎は「うん」とうなずいた。


 つづく・・・


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