鮫島は、ゆっくりと手紙を読み始めた。

(CV:向井理)

【何も言える立場ではないことは分かっていますが、言い訳をさせてください。
あのとき、陽子ちゃんは、火事で上から落ちてきた鉄筋の下敷きになりました。
そして、足の自由がきかなくなってしまい、
逃げることが出来ませんでした。
何度も何度も持ち上げようとしましたが、
僕一人の力ではどうにもなりませんでした。
僕は今まで自分がやってきたこととは何だったのか
バカらしくなりました。
目の前の愛する人を救えずに、
何が消防士なんだろうと。
そして、逃げ行く人に、助けを求めましたが、
誰一人として、助けてはくれませんでした。
そして、火の手が迫ってきました。
僕は、陽子ちゃんと一緒に死ぬことを考えていました。
そしたら、陽子ちゃんが
「お願い、逃げて」
と言ってきました。
もちろん、僕は、そんな事出来ないと言いましたが、
「お願い、、、ワタシの、最期のお願いだから・・・」
と、言われたので、
僕は、逃げることにしました。
正直、あそこで陽子ちゃんと
死んでいれば、もっと早くに楽になれたのかな?
と、思います。
おそらく、この手紙が飯田さんの手に渡る頃には、
僕は陽子ちゃんと一緒のところにいると思います。
どーか、僕の、無責任な行動をお許しください。

向井治虫。】


鮫島「・・・」

飯城「無感情の文面のわりに、、、だろ?」


文章だけ見ると、感情のこもっていない、

文に見えるかもしれないが、

おびただしい数の、水滴の跡、

そして、修正液、消ゴムで消した跡などが

この手紙には残されていた。

飯城「とてもじゃねーが、二回も読めねぇよ。」

鮫島「・・・」

何も言えなかった。言葉がなかった。


飯城「アイツは、人の愛ゆえに死んだのさ。

そして、、、しょーちゃんもな・・・



オレはその手紙を読んで思ったよ。


しょーちゃんの、『逃げてくれ』って言う言葉は、愛だ。

そして、向井がしょーちゃんのお願いを聞いたのも、、、

愛だ。


相手のしたいことをさせてあげるのは、愛だ・・・

だが、命と引き換えに手にいれた愛に、、、

向井は耐えきれなかった。

愛する人からの最高の愛を、、、向井は、、、背負いきれなかったんだ・・・




だけどな、アイツは偉いよ。

葬式も全部出てキチンと供養してやったと思うよ。

オレがもし、向井の立場で、

しょーちゃんに死なれたら、

多分、1週間も生きてらんなかったと思うぜ、、、

アイツは、、、目の前で自分の愛する人を、

自分が助けるべき場面で、

ただ、突っ立ってることしか出来なかった・・・

その辛さを考えてみたらよー、

オレはその場でしょーちゃんと一緒にいて、

しょーちゃんと一緒に死ぬことを選んで、

結局しょーちゃんのお願いを聞けなかったと思うぜ、、、

本当に、、、本当に偉いよ、、、凄いよ・・・

流石、、、しょーちゃんだよ・・・

男の、、、男の見る目が、、、良いんだもんな・・・w」




飯城は泣いていた。



そして、オレも俯くことしか出来なかった。





飯城「ただよ・・・

アイツが生きてれば・・・

これから、助かる命だってあったはずだぜ?

それ、、、言ってやりたかったなー、、、」





鮫島「幸せだったんじゃねーかな?」


飯城「・・・」


鮫島「オレも考えてみたんだよ、本当の愛。

オレが思うに、『本人が愛されてる』って感じられれば、

それは、例えmixiでのやり取りであっても、

命の危険が迫るところであっても、

『本当の愛』って言うことになるんじゃないかな?」


飯城「・・・」


鮫島「こういう言い方は不謹慎だと思うけど、

向井さんも、生野さんも、幸せだったんじゃねーかな?

生野さんは、『愛する人を見捨ててまでも、私のお願いを聞いてくれた』って思ってると思うし、

向井さんも、『自分の命よりも、オレの命を守ってくれた』って・・・」


飯城「・・・」


鮫島「どんな形であれ、

本人が愛されてるって感じたのなら、

それは他人がどうこう言おうが、『本当の愛』に変わりないんだよ。」


飯城「クックックw」


鮫島「な、なんだよ?!」


飯城「いや、まさか、ゴリラみてぇなヤツから

愛の講義が聞けるなんて思ってなかったからよw」

鮫島「て、てめぇ!!」

飯城「ほら、全部話したんだから、飯でも奢れよw」


鮫島「は?オレがお前の事件暴くためにどんだけ金使ったと思ってんだ!!

お前に奢る金なんてねぇよ!!」

飯城「ま、いいじゃんwオレら語りーの(笑)した仲じゃねーかw」

鮫島「お前語りーのとかつかうんじゃねー!!!オッサンが!!気持ち悪いわ!!」

飯城「分かったよ、焼き肉で良いよw」

鮫島「オレの話を聞けええ!!」





飯城(しょーちゃん、向井さん。

アンタら、そっちで幸せに暮らしてんのかよ。

オレもあと、100年くらいしたら行くからよ、

ちょっくら待っててくれよ。)


鮫島「うわ、お前なに空とか見てんだ、キモチワリー」

飯城「あん?オッサンにもな、黄昏る瞬間って言うのが必要なんだよw」



そう言いながら、

二人で、公園を後にした。

空はすっかり雲一つない、

晴天だった。

~mixi消防団物語(終)~