酔いどれ交遊録(7)N氏のこと⑤ | 酔いどれ介護録 爺婆糞戦記

酔いどれ交遊録(7)N氏のこと⑤

 N氏とは年に一度旅行をする。
 といって二人旅というのではなく、二人に共通の仲間たちと一緒で、4~6人の旅になるのが普通だ。


 今年は広島だった。
 去年は北海道の余市、小樽、札幌。
 その前が鹿児島で、さらに前がまた北海道余市、小樽、札幌、もっと前がまた鹿児島。
 なんでまた同じところに何度も、と思われるだろうが、これにはわけがある。
 
 わけと言っても、私とN氏のことだから、大したわけではない。
 鹿児島ときいてピンと来る人もいるだろう。飲兵衛が鹿児島に行くと言ったら、芋焼酎目当てに決まっている。
 北海道の余市といえば、ニッカウィスキーの発祥の地だ。



sanzenri


 広島にはそういうのはないなあ、なんて思うのは、やっぱりお酒の素人さん。
 広島は、全国でも有数の日本酒の生産量を誇っている。ちょっと古いのだが、平成10年の統計では、清酒の出荷量は第6位につけている。


 ちなみに1位は断トツの兵庫。以下、2位京都、3位新潟、4位秋田、5位愛知と続く。

 広島のなかでも、東広島市の西条は、兵庫の灘、京都の伏見と並び称される、三大銘醸造地の一つだ。
 西条には10の醸造元(蔵元)がある。もともとは11あったのだが、残念ながらそのうちの一つは廃業してしまっている。


 10の蔵元の銘柄を列記すると、賀茂泉、賀茂輝、賀茂鶴、亀齢、西條鶴、山陽鶴、白牡丹、福美人、千代乃春、桜吹雪となる。このうちの上から8番目までが、西条駅の周辺に位置し、白壁とレンガ煙突の「蔵の町」を形成しており、なかなかの風情だ。



sakagura


 だいぶ回りくどい説明になったが、要するに、広島もやっぱり酒目当ての旅行だったのだ。
 ただ残念なことに、西条に着いたのは夕方の4時過ぎ。中まで見学できたのは、白牡丹賀茂鶴のみで、試飲にいたっては白牡丹だけだった。


 N氏が欲張りでアチコチ回ったせいもあるが、主たる原因は、レンタカーの運転がもっぱらN氏であったことにあると、私は睨んでいる。


 以前は、舐めるだけとか言って、けっこう口にしていたのだが、飲酒運転取締りがやかましくなってきている今日では、それもはばかれる。
 どうせ試飲できないのなら、いっそ、と思ったに違いないのだ。
 
 空港に戻ってレンタカーから解放された、飛行機待ち時間に、お好み焼きと牡蠣をつまみに、「亀齢」を美味そうに飲んでいたN氏の顔が、今でも目に浮かぶ。


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