ハマスはなぜ無謀な闘いをするのか


■パレスチナ…ガザ地区周辺制圧へ

 突然に「ハマス」はイスラエルへの攻撃に挑んだ。誰が考えても無謀な闘いだ。戦力や軍事力ではイスラエルには勝ちようがない。
 だから、いままでも小さな闘いで「テロ行為」には及んでも本格的な闘いにはならなかった。

 なぜ、いまハマスは動き出したのか。 

ーーーーーー(引用)ーーーーーー
イスラエル軍「総攻撃へ」…ガザ地区周辺制圧 ハマス世界中に「金曜に動員」呼び掛け
2023/10/11  テレビ朝日

 本格的に地上へ侵攻する可能性が高まっています。イスラエルの国防相は「軍が総攻撃に向かう」と宣言しました。一方、ハマスはガザへの支援のために、世界中にいるパレスチナ人やアラブ人に13日に動員するよう呼び掛けています。

■ハマス戦闘員が襲撃 観客「生き地獄」

 青空に打ち上げられる無数のロケット弾が向かう先は、パレスチナ自治区のガザに近いイスラエルの街アシュケロンです。

 ハマスはアシュケロンの住民に対して、現地時間10日午後5時までに退去するよう警告していました。

 昼夜問わず続く、ガザに対するイスラエルの報復攻撃。イスラエル軍の報道官は10日、「ガザ地区との境界線を完全に制圧した。周囲に戦車と航空機による鉄壁を築いており、近づくものを射殺する」と宣言しました。

 日本時間11日午前4時半時点で、イスラエル側、パレスチナ側双方の死者は少なくとも1900人に上っています。

 イスラエル軍は、被害の大きかったガザ地区からすぐ近くにある集落をメディアに公開しました。およそ200人が殺害され、うち40人は子どもだったとしています。

 ハマスの武装集団はイスラエルへの攻撃を始めた7日に集落を襲撃し、銃を乱射した後、住民数十人を人質にとって戻ったということです。

 7日、ガザ近郊の野外フェス会場では、ハマスの戦闘員が観客を襲撃し、多くの人が犠牲になりました。

 逃げ延びた参加者:「本当に生き地獄だった。私は二度戦争に参加したが、このようなことは一度も見たことがない。あちこちに遺体があった。完全な虐殺だ。彼らは男だろうと女だろうと、若者だろうと老人であろうと気にしなかった」

■イスラエル軍幹部 本格的な地上侵攻を示唆

 イスラエルの国連大使によりますと、「ハマスに最大150人の人質が捉えられている」ということです。

 一方、ハマスの報道官は人質について、「住宅におとなしく暮らすパレスチナ人が無警告の攻撃を受けた場合には、気の毒だが人質にしている敵の民間人のなかから1人ずつ処刑することを宣言する。この決定をとらざるを得なかった責任は、イスラエルの指導者にあるということを世界に明らかにするためである」と声明しました。

 名指しされた指導者、イスラエルのネタニヤフ首相は次のように述べました。

 ネタニヤフ首相:「罪なきイスラエル人に対するハマスの蛮行は想像を絶する。やつらは野蛮なケダモノで、過激派組織『イスラム国』と同じだ。文明国が力を集結して倒したように、ハマス打倒のためイスラエルを支援すべきだ」

 イスラエルは「10年以上続いているパレスチナ自治区ガザの封鎖をさらに強化する」と宣言しました。

 イスラエル ガラント国防相:「我々はガザを完全に包囲している。電力も、食料も、水も、燃料もすべて遮断する」

 ガザ地区との境界線から数キロの場所にはイスラエル軍の戦車や装甲車が集結しました。

 イスラエル兵:「今から、ガザ地区への水の供給を止めます」

 軍は「過去最高となる30万人の予備役を招集する」と発表しました。

 10日、イスラエルのガラント国防相は「イスラム組織ハマスが侵入したイスラエル領内の支配を取り戻した」と表明。今後、イスラエル軍は「総攻撃に向かう」と宣言しました。

 イスラエル軍の幹部の1人は、ガザ地区の住民は逃げられるうちにエジプトに避難するよう勧告し、近く本格的な地上侵攻が始まる可能性を示唆しました。

■専門家「戦闘が世界中に広がる可能性も」

 現代イスラム研究センター 宮田律理事長:「今後はイスラエルが本格的な報復に入ると思う。予備役30万人招集したというところを見ても、地上部隊をガザに送って制圧する。そのなかで、一般市民の犠牲も出る可能性が非常に残念ながら高いと言わざるを得ない」

 一方、アルジャジーラによると、ハマスはガザ支援のため世界中にいるパレスチナ人やアラブ人に対し、13日に動員するよう呼び掛けたということです。

 宮田理事長:「戦闘がパレスチナだけに限定されるのではなくて、世界中に広がっていくことも最悪の場合考えられる。パレスチナ人やアラブ人は欧米にも広がっているし、世界中で活動しているわけなので、いつどこでテロが起こっても不思議ではない状態になってしまう可能性」

(「グッド!モーニング」2023年10月11日放送分より)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000319319.html

ーーーーーー

■ハマスはなぜ、勝ち目のない戦いに挑むのか?

 二つの考えがある。
 一つは、パレスチナ(ハマス)が行き詰まってしまいい、もうこれ以上はイスラエルのやり方に我慢できないという状況に追い込まれてしまったということ。
 どうせやるなら、破れかぶれだ。とことん闘ってイスラエルにも相当の被害を及ぼした上で、敗れ去るというもの。これは、第二次世界大戦の日本と同じやり方だ。

 もう一つは、イスラエルの罠にはまってしまって「義旗作戦」に載せられたというもの。
 これは事情はよく見えてこないが、イスラエル側の要望に載せられて攻撃をはじめてしまったというものだ。そして、イスラエル側はそれを理由にパレスチナを攻撃(反撃という名の)攻撃をするものだ。
 イスラエルは、この際、パレスチナを壊滅的に攻撃してイスラエルの地からいなくさせるのが目標である。

 どちらにしても、イスラエルとしては世界の世論を味方につけやすい。自分たちが始めたのじゃない、相手(ハマス)が始めたのだから。

 ハマスにしてみれば、部の悪い闘いを始めてしまったようだ。今回の闘いで、少なくともパレスチナのガザ地区は壊滅的なダメージを受け人が住める場所ではなくなるだろう。おそらくは、パレスチナの自治区の権利も失うかもしれない。

 だが、それまでに多くの人命を失うだろう。イスラエルにしてみれば、自分たちを攻撃するイスラエル(ハマス)の人々の命など知ったことではない。それに、そのために自分たちイスラエル人の同胞を失うのも恐れてはいない。闘いは、どちらかが勝つのだという思想だ。

 イスラエルは、今回は本気で来るだろう。

 今回のイスラエルとパレスチナとの争いは、①パレスチナの行き詰まりか、②イスラエルによる義旗作戦か、のどちらかであろうが、いづれにしても似たようなものである。

 双方に相当の人的被害が出て、結局ハマスは叩きつぶされ、イスラエルに有利にことが運ぶように思われて仕方がない。

 そもそもは、第二次世界大戦後に、国がなかったユダヤ人のために「イスラエル」国家を誕生させ、現在地に暮らしていたパレスティナ人を追い出したことから始まったことだが、80年も経っても何の解決もない歴史的な不幸な出来事なのである。

 ここにまた、不幸が重なったとしか言いようがない。
世界は、不条理に満ちている。
***