スティーブ・ジョブズの有名なアドバイス。実は人をより不幸にしているかも


■スティーブ・ジョブズ
 Steve Jobs、1955年2月24日 - 2011年10月5日は、アメリカの企業家、実業家。コンピュータのアップル社を創業した伝説の人物。2011年10月5日に、わずか56歳でこの世を去った。 

 伝説の人物なだけに、その人生のエピソードには事欠かないが、なかでも多くの「名言」と言われるジョブスの言葉が取り上げられる。

 これらの「言葉」によってもジョブスは生き続けており、多くの人々に影響を与え続けている。

 ここで、有名なジョブスの言葉が取り上げられているが、今回はこれを肯定的に捉えるだけでなく、否定的な面もあるのではないかという問題提起の記事である。

 
 

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スティーブ・ジョブズの有名なアドバイス。実は人をより不幸にしているかもしれない

9/17(日) 21:41配信 ライフハッカー・ジャパン

数カ月前、スティーブ・ジョブズの名言のうちでいちばん好きな言葉は、と周りの人にたずねてみたところ、ダントツ1位だったのは以下の言葉でした。

世界を本気で変えられると思っているようなクレージーな人間が本当に世界を変えられるんだ。

この言葉を選んだ人々にその理由を尋ねると、より高いところを目指そうと思わせてくれるから、と。より大きな目標を掲げるように、もっと大きな夢を見るように、と思わせてくれたから、と。すなわち、より高い期待値をもつように、というアドバイスだからということでした。

これは一見すばらしいことのようにきこえますが、必ずしもそうとは言い切れないのです。
期待が高いと、失望も大きい

デンマークは、世界幸福度報告において何十年もの間、トップもしくはそれに近い順位を維持してきました。(ちなみにアメリカは現在15位、日本は47位)。

一人当たりの国内総生産、社会的支援、健康寿命、人生における選択の自由、寛大さ、汚職がないことなどがその理由だと研究では指摘されています。 しかし、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(イギリス医師会雑誌、British Medical Journal)に掲載されたある研究の著者によると、デンマーク人が「もっとも人生に満足している人たち」である理由、 それは、現実的な期待感なのだそうです。

研究では以下のように述べられています。

将来恵まれた人生になるだろうと考えている人ほど満足のいく人生を送るといわれてきたが、その期待感が極端に高いと逆に失望や人生に不満を抱く状態に陥ることもある。

すなわち、自分は世界を変えられると信じていた人がそれが叶わなかったとき、客観的にみてすばらしい業績を上げていたとしても、失望してしまうということです。

そこで私は、昨年の業績についてどの程度満足しているか、経営者数人にたずねてみました。するとおもしろいことに、不満が残ると答えた回答者に関しては、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの調査結果に合致した傾向がみられました。

さらに、『スモールビジネス・エコノミクス』誌(中小企業の経済、Small Business Economics)に掲載された研究によると、非現実的な期待感というのは、経営者の間で「最も多くみられ、かつ悪影響を及ぼす」先入観なのだそうです。

たとえば、売上目標を6千万ドルに設定したある事業家は、実際の売上が5千8百万ドルに「とどまってしまった」と感じました。

前年比400%増であったにもかかわらず、です。 また別のケースでは、レストランのチェーン店を5店舗新規オープンさせるつもりでいたところ、4店舗「しか」オープンできなかった、と感じた経営者もいました。事業拡大を始めた初年度であったにもかかわらず、です。

これらのケースは、いずれもすばらしい業績であったにもかかわらず、 当人たちは、失望し、不満が残り、やる気をなくした、とさえ述べていました。


短期的な目標は実現可能なものにする

自分が世界を変えるんだという心意気や大きな夢を抱くのがよくないということではありません。 レストランをオープンしてまだ日が浅くても、いつの日か50店舗に拡大するという構想を温めているなら、あらゆる決断はその目標に沿った形で下すべきでしょう。

規模拡大に耐えうるコンセプトを編み出したり、優秀なチームを築いたり、パートナーや投資家を募ったりする必要もあるでしょう。

ただこうした夢は、現実的な目標やマイルストーン、期待値とのバランスを取りながら実現していくことも必要です。

順調に1店舗がオープンできたら、それを最終目標の50店舗と比較するのではなく、まずはそれ自体を大きな成果として評価し、その後で次の段階に注意を振り向けましょう。

年商1億ドルの会社を目指している中、やっと500万ドルの売上を達成できたら、最終目標額と比較するのではなく、まずは現時点での売り上げ自体がすばらしい成果であることを評価し、その後で次の段階に注意を振り向けましょう。

ビジネスプランは、最終目標(たとえそれが自分が世界を変えられると思うほどクレージーな目標であっても)を念頭において立てるべきです。思う存分大きな夢を抱いてください。

ただし、短期的な目標は実現可能なものにとどめておいてください。そうすることで、挫折するような事態に遭遇してもブレることなく、成長を続ける中で苦労して勝ち取った成功の一つひとつをポジティブに評価することができるでしょう。

そして、旅路が、最終目的地と同じくらい有意義で充実した楽しいものになるでしょう。

Originally published by Inc. [原文]

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https://news.yahoo.co.jp/articles/1ba53631e4abbd622b06eb26c19ff61249aec006

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■目標設定は実現可能なものにとどめておく

 結論としては「目標設定は実現可能なものにとどめておく」のがよい、ということだ。

 ジョブスの言葉は「壮大で、果てしなく高いところへ目標を持たせて、やる気を出させてくれる」。事実、多くの人が肯定的に捉えている。

 だが、現実には、壮大な目標では実現が難しいし、実際のところ到達しないことだって多い。その結果、人間はモチベーションが下がったり、やる気そのものを失ってしまうことだって多い。

 そうなったのでは、せっかく「大きな目標」を持っていたのに、そこへすら到達できないかもしれない。それでは、ジョブスの言葉は意味を成さなくなるし、人によっては、不幸の元になるかもしれない。

 この記事は、そのような主旨のようだ。だから目標設定は実現可能なものにしなさいという。

 皆さんは、どう考えるだろうか。

 私は、スティーブ・ジョブスのようなクレイジーな人間の言うことには「耳を傾ける」ほうがいいと思っている。何かをイメージするなら「壮大なほうがいい」「夢は大きい方がいい」「人がやらないことに取り組む方がいい」と考える。

 と同時に、自分の実力を知り、実現可能な目標設定をすることの方が、現実的であり達成もさほど困難ではなくなる。

 つまり、頭の中で考えることと、実現するために実行することとは別であっていいのだと考える。この不一致感を自覚しておくのが良い。やがて、徐々に向上してゆくものだ。全身全力で取り組めば、壮大な高い目標地点へも到達するかもしれない。しないかもしれない。
 それが「人生だ」と考えられるようになれば、たいていのことは満足できるようになるものである。

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