拙速な原発汚染水の海洋投棄に 中國の強烈な反応


■想定外の「バカさ加減」

 岸田政権の拙速な原発汚染水の海洋投棄に、世界が反応している。なかでも中國の「日本の水産物の全面禁輸」は、強烈だ。

 これを政府が想定外だったというから驚きだ。フクシマの汚染水の海洋投棄という日本にとって極めて重要な事項を決定し実行するからには、慎重にも慎重を重ねてあらゆる可能性を検討した上で、それらへの対策も考えた上でなければならないはずなのに、隣国の反応すら想定外だったとは、この政権の「愚かさ」「無能さ」が際立っていることを現している。

 おそらく、日本国民には「安心」「安全」をアピールし、フクシマの漁民達には「風評被害(がもしあったら)」補償するという対策だけをたてて、東電の都合の良いように汚染水の廃棄を決めたのであろう。

 中國や韓国の国民の反発は以前からあり、反対運動やデモも発生している。また海洋廃棄」を決めたと発表しただけで、中國では日本の海産物の放射能検査を強化し始めていた。
 この段階で気づかなければならなかったはずだ。

 中國が、政治的な意味も含めて強硬な姿勢を見せているのは明らかだが、日本の外交のまずさは天下一品だ。

 
 

ーーーーーー(引用)ーーーーーー
中国の全面禁輸「想定外」 政治問題化する処理水放出…不信募る日本

有料記事福島第一原発の処理水問題
上海=井上亮 北京=斎藤徳彦 林望 千葉卓朗 加藤裕則2023年8月24日 21時50分 朝日新聞

処理水の海洋放出が始まった東京電力福島第一原子力発電所=2023年8月24日午後1時59分、朝日新聞社ヘリから、岩下毅撮影

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 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、中国が切ったカードは日本産水産物の全面禁輸だった。日本からは「想定外」「異常な対応」との声が上がるが、今後の経済的な影響は小さくない。両国関係が上向かず、政治的解決の糸口も見えない状況だ。

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 24日までの2日間、上海では「国際漁業博覧会」が開かれた。オーストラリア産マグロの解体ショーなどで盛り上がりを見せた会場には、約30カ国から4千社超が出展。だが、日本企業はわずか数社程度だった。

 そのさなか、日本産の水産物の全面禁輸が発表され、関係者には衝撃が走った。「冷凍は在庫があるけれど、今後取引先がどう反応するかわからない」。日本の冷凍マグロを扱う業者の担当者は顔を曇らせた。

 農林水産省によると、昨年の中国への水産物の輸出額は、国・地域別で最も多い871億円。このうち467億円と品目別最多で、刺し身などが人気なのがホタテだ。日本の冷凍ホタテの卸業者は肩を落とす。「放出前ですら取引のある数十店からやめたいと言われている。今後が怖い」

 ALPS処理水を「汚染水」と呼び、放出に反対し続けてきた中国。中国政府と国営メディアの論調は、「危険」「無責任」一色のため、市民の間では不安が高まっている。これまでは様子見の市民も多かったが、スーパーやネットショッピングで塩が品薄になるなど、過剰ともいえる反応まで出ている。

 中国は海洋放出が近いとみられた6月から批判の度合いを強め、「(海洋放出は)コストの安さを見込んだ方法だ」として見直しを求めてきた。

 計画が「国際的基準に合致する」とした国際原子力機関(IAEA)の調査報告書が出た直後の7月には、2011年の原発事故から禁止されてきた10都県以外の水産物などへの放射能の検査を強めると発表。通関に2週間~1カ月程度かかるようになり、鮮度が保てないため冷蔵(チルド)の鮮魚は事実上、輸入が止まっていた。

 今回の全面禁輸は全国が対象で、冷蔵や冷凍を問わず、魚類や貝類、甲殻類、海藻なども幅広く適用されるとみられる。

 中国にとって、水産物輸入額(20年)トップ10に日本は入っておらず、経済的損失は大きくないとの判断もあったとみられる。香港も24日から10都県を対象に水産物の輸入を停止した。昨年の輸出額は755億円で中国に次ぐ2位。日本にとっては影響は小さくない。

https://www.asahi.com/articles/ASR8S72CVR8SUHBI04W.html
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■影響を受けるのは、フクシマの漁民だけではない

 中國の「日本の海産物の全面禁輸」で、ある意味で日本の漁業全体へ影響を受けることが明らかになった。

 北から南まで日本中だ。日本は海洋国家である。漁業は全国に広がっている。国民が食べるためのサカナや海産物だけではない。輸出するための漁業も盛んなのだ。

 特に中國への輸出を中心に行っている漁業者や貿易業者は打撃が大きい。
 また、海外で日本産の海産物を取り扱っている飲食店や業者も打撃を受けるだろう。

 国内でも、国民がいくら政府が「安心」「安全」と歌っていても、すべての人がそのように考えるとは思いにくい。国内の飲食店や販売業者も大きな影響を受けることだろう。

 福島県や隣接する茨城県などの海水浴場や周辺の飲食店や民宿などが影響を受けないはずはない。

 上げ出したらきりがないだろう。そういうことに政府は何らの準備も対策も打ってこなかったようだ。福島県の漁業者の組合さえも、いまだに「反対」の姿勢を貫いている。

 それらに何の答えも出さずに、「安心」「安全」だから汚染水を海洋投棄すると決めたと、一方的に通達だけして、実行してしまった。

 そのつけは、またしても国民に回ってくるのだ。東電は補償をするという。だが、それは国民の電気料金から支払われるのだ。無限に国民にツケを回す東電と政府のやり方だ。
 
 政府にとって、東電の存在は「大きい」のだ。東電が困らないようにするのが岸田政権の仕事だ。国民が困ろうが、海外が反対しようが知ったことではない。

 かくして、日本はどんどん衰えてゆく。「原発の汚染水に残るトリチウムは、海水で100倍に薄めれば問題ない」というとてもじゃないが「こどもだましの理論」を科学的と称して、海を汚し続けようとしているのだ。

 2050年には、フクシマ第一から放射能汚染をゼロにするのだそうだ。掛け声は勇ましいが、なんらの科学的根拠もない。

 おそらくは、今回の汚染水の海洋廃棄は、自民党政権が行う最悪の政策のひとつとなるだろう。

 中國や他の国々からの「中傷誹謗」だけでなく、実害としての訴えも出てくるであろう。海洋を原発の汚染水で汚した結果として、莫大な損害賠償を請求される可能性がある。

 これも、日本の未来の子どもたちが担うことになるだろう。
 なぜ、そのように考えて、もっと利口な対策が立てられないのか。いま、日本の原発は次々に運転再開を目指している。それらの原発もフクシマと同じことにならない補償はない。補償はなくても、いま運転していた方が「得」なのだ。電力会社を潤わせていれば、政治家も潤う。「今だけ」「金だけ」「自分だけ」の世界だ。

 日本には、恐ろしい未来しか見えてこない。

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