「レコード芸術」休刊に波紋広がる


■「レコード芸術」休刊

 音楽之友社が発行するクラシック情報雑誌「レコード芸術」が休刊になる。71年の歴史があると言う。休刊の理由はCDの売り上げ減少に伴い、雑誌の売り上げが下がったためだそうだ。

 クラシック音楽愛好者にとっては、同じく音楽之友社の雑誌「音楽の友」と並ぶクラシック情報誌であった。この雑誌の存在を知らない人はいないだろう。多くの愛好家にとって「レコ芸」の愛称で親しまれた同雑誌の廃刊は驚くことだろう。

 私も個人的には半世紀前から、読んでいた雑誌だ。だがクラシック音楽もLPレコードから80年代になってCDの普及の広がりで、魅力薄となったのを覚えている。それでもその後約40年も続いてきたのだから偉いものだ。
 私は、CD時代に入ってクラシック関係の雑誌には興味が湧かず、80年代以降は購入も読むこともしなくなった。

 LPが市場から消えて衝撃を覚えたが、登場してきたCDの音質の酷さ(悪さ)に絶望し、おそらくはCDもやがて消え去る時が来るだろうと、その当時思ったものだ。

 CD音楽は、やがて台頭してきた電子機器による音楽配信で急速に廃れてきている。その煽りを食っての「レコード芸術」の休刊である。来るべき時がきたのだと思う。

 

ーーーーーー(引用)ーーーーーー
「レコード芸術」休刊に波紋広がる…クラシックCD評71年、CD発売減で打撃
2023/06/23 17:00

    クラシックガイド

 クラシックCD評を掲載する月刊誌「レコード芸術」(音楽之友社)が、20日発売の7月号をもって休刊する。1952年の創刊以来、日本のクラシック音楽批評の一翼を担ってきた老舗雑誌の休刊は、音楽界に波紋を広げている。(松本良一)
パスカル・ヴェロ指揮の仙台フィル…信頼と遊び心、陽の気発するオーケストラ
71年の歴史に幕を閉じることになった「レコード芸術」7月号の表紙
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存続求めネットで署名活動

 「レコード芸術」は国内で発売されるすべてのクラシックCDの評論を掲載する専門誌で、優れたアルバムに贈られる「レコード・アカデミー賞」の主催や音楽評論家によるエッセー連載などで長らく親しまれてきた。しかし、近年の出版不況もあり、事実上の廃刊が、今年4月に発表された。

 音楽之友社の大谷隆夫・取締役常務執行役員(72)は、「CDの発売点数の減少など、時代の変化に対応できなかった」と話す。

 大谷常務によると、クラシックCDは1990年代のピーク時には毎月400点近く発売されていた。近年は100点程度に減ったことで、CD評が売り物の同誌を直撃した。「最盛期は10万部発行していたが、最近は5万部ほど。広告収入の落ち込みにも歯止めがかからず、3年ほど前から赤字が続いていた」

 同誌の存続を求めて、音楽評論家やクラシック愛好家らを中心にインターネット上で署名活動が行われている。現在までに約3400人分の署名が集まった。

 呼びかけ人の一人で音楽評論家の舩木篤也さん(56)は、「厳しい状況なのは察していたが、発表から2か月余りでの休刊はあまりにも急。もっと打つ手があったのではという思いはぬぐえない」と表情をくもらせる。署名活動に踏み切った理由について、「休刊は避けられないが、録音芸術の貴重な批評の場が失われていいのかということを問いかけたかった」と説明する。

 同誌の休刊はレコード会社にとっても痛手だ。ユニバーサルミュージックの五十貝一・クラシックス&ジャズマネージングディレクター(42)は、「熱心なクラシックファンの情報ニーズを満たす媒体がなくなるのは残念。何らかの形で残ってほしい」と話す。

 音楽之友社は、「休刊後も、これまで蓄積してきた情報を生かす方策を探っている」としている。
読者層若返りが鍵

 「レコード芸術」の部数低迷は、主な読者層が50~70歳代で、クラシックCDの購買層と比べて高齢化が進んでいたことも背景にある。良質の批評を提供するとともに、若い世代のファンにアピールする編集方針・内容を掲げた媒体を新たに生み出せるかどうかが、復刊の鍵となりそうだ。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20230620-OYT1T50099/

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■惜しむ声もあるようだが

 突然の廃刊の発表に戸惑う声も多い。なんとか廃刊しないでくれと望む人も多いようだ。
 だが、時代の趨勢である。音楽そのものが廃れているのに、情報雑誌だけが生き残るという方法はない。惜しんだり、懐かしんだり、継続を望んだり...そういう人々は、世界全体が衰退しており、クラシックの音楽界も同様に衰退しているということに気がついていないのかもしれない。
 
 この「レコード芸術」だけではない。様々なものがありとあらゆる場所で廃れていっているのだ。休刊の理由は「CDの売上減で、雑誌の売り上げが下がった」ことのようだが、単に経済的な事情だけではあるまい。クラシック音楽の世界の衰退が背景にあることを知らなければならないだろう。

 哀しいことだが、また一つ消え逝くものが増えたということだ。

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