致死率30%超の真菌カンジダ・アウリス
■致死率30%超の真菌カンジダ・アウリスが世界で拡大
新型コロナの流行から、さまざまなウィルスや菌類が猛威を振るっている世界だが、ここにきてまた一つ新たな「脅威となる菌」が現れてきた。
致死率30%超の「真菌カンジダ・アウリス」である。アメリカのCDCが警告を発した。
2009年に帝京大学の槇村浩一教授らによって新種の菌として発見されたものだ。2016年にはアメリカのニューヨークの病院で発見されて以来28の州とワシントンDCでも見つかっているそうだ。
地球温暖化との関連も伺わせるが、これらの新種の真菌類が人類の脅威となり始めている。「確実なことは何も分かっていない」と専門家も言うが、感染して発病してもこの菌が見つけられるかどうかも不明だし、かりに見つかったとしてもまだ治療薬もないという。
恐ろしい菌である。2019年に学術誌「mBio」に発表された論文では、カンジダ・アウリスは3つの大陸で同時発生的に出現した人間の健康への脅威であるとしている。
まだ、広範囲に出現しているとは言えないようだが、共通しているのは気温の高温化だという。温暖化に伴う出現のようだ。
免疫力の低い人は、感染して症状が出る可能性もある。アメリカのCDCでは感染した場合の死亡率は30〜60%だとして、警戒を呼びかけている。
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致死率30%超で薬剤耐性も、真菌カンジダ・アウリスが世界で拡大、「恐るべき勢い」と米CDC
4/18(火) 17:11配信
ナショナル ジオグラフィック日本版
今後さらなる脅威の恐れ、「気候変動によって出現した最初の病原真菌」か
ドイツのビュルツブルクの研究所で、培養したカンジダ・アウリス(Candida auris)の入ったシャーレを手にする研究者。日本で最初に確認された病原体は今、世界中に広がっている。(PHOTOGRAPH BY NICOLAS ARMER)
カンジダ・アウリス(Candida auris)は新種の真菌として2009年に帝京大学の槇村浩一教授らによって初めて報告された。東京都内のある女性患者の耳から見つかったものだ。2016年、米国としては初めての感染例がニューヨークの病院で発生。以来カンジダ・アウリスは米国の28の州と首都ワシントンD.C.で見つかっている。
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米国では2022年に2300人超がカンジダ・アウリスに感染しており、米疾病対策センター(CDC)はカンジダ・アウリスが「恐るべき勢いで」広がっていると警鐘を鳴らす。
初期の研究では、カンジダ・アウリスは気候変動に伴う世界的な気温の上昇に適応することによって、人間の体内で生き延びられるよう進化した可能性が示唆されている。しかし、具体的にどこで、なぜ突如として出現したかは今も謎のままだ。
「確実なことは何も分かっていません」と、米テキサス大学ヒューストン医療科学センターおよびメモリアル・ハーマン病院で感染症疫学科医長を務めるルイス・オストロスキー氏は言う。しかし、気候変動が影響しているのではないかという説は「十分に考えられる」と氏も認める。
カンジダ・アウリスについて今分かっていることや、カンジダ・アウリスの感染例の増加に気候変動がどう関わっているかについて、さらに、今後新たに出現するかもしれない危険な真菌について、科学者に聞いた。
カンジダ・アウリスとは?
真菌感染症のなかには、水虫のようにありふれたものもある。それに比べるとカンジダ・アウリスの感染例は少なく、また発症する部位も多くの場合、体内だ。そして血液の中で増殖したり、傷口を化膿させたりする。
免疫機能が低下している人は感染のリスクが高い。また、点滴などを伴う治療を定期的に受けている人も、医療器具を介して感染するリスクが高い。
「ジムで感染することも、子どもたちが学校で感染することもありません。しかし、病気などがあって頻繁に医療機関に行く必要がある人は気を付けるべきでしょう」とオストロスキー氏は言う。
カンジダ・アウリスが厄介なのは、菌を検出するのが難しい上、治療はさらに困難だからだ。感染の有無を調べる一般的な血液検査では、カンジダ・アウリスを検出できる確率は50%ほどだと、オストロスキー氏は説明する。比較的規模が大きく、研究機関も併設しているような病院や大学であれば、血液中の真菌の遺伝子を調べる検査を行えるが、こうした検査は一般の病院ではほとんど行われていない。
たとえカンジダ・アウリスを検出できたとしても、多くの場合、今ある抗真菌薬が効かない。しかもその胞子は人間の体外のさまざまな物の表面に付着して何週間も生き延びられる。つまり、カンジダ・アウリスを体内から排除できたとしても、再感染の危険は残るということだ。日本型は今のところ抗真菌薬への感受性が高く、大規模な院内感染などは問題になっていないが、CDCはカンジダ・アウリス感染症を発症した人の30~60%が死亡したと推定している。ただし、その多くが感染以前に何らかの疾患を抱えていたという。
近年カンジダ・アウリス感染症が急増したのは、新型コロナウイルス感染症のまん延で医療スタッフや医療用品が不足し、病院によっては防護具などを繰り返し使用しなければならなかったケースがあったからだろうと、オストロスキー氏は考えている。
地球温暖化によって生まれる新たな真菌
人間の体温は通常、真菌が生き延びるには高すぎる。しかし、気候変動によって平均気温が上昇し、猛烈な熱波が頻発することで、真菌も高温の環境に適応し、人間の体内でも生き延びられるように進化した可能性がある。これが、カンジダ・アウリスが突然出現した理由として、科学者たちが唱えている説だ。
2019年に学術誌「mBio」に発表された論文では、カンジダ・アウリスは3つの大陸で同時発生的に出現した健康への脅威ではないかという仮説を立てている。
筆者の1人で米ジョンズ・ホプキンス大学の感染症専門医であるアルトゥーロ・カサデバル氏は、世界各地で共通しているのは気温の上昇だと言う。
「カンジダ・アウリスは気候変動によって出現した最初の病原真菌かもしれないと考えています」とカサデバル氏は言う。
2019年に学術誌「Journal of Fungi」に発表されたCDCの研究者たちによる論文でも、カンジダ・アウリスは気候変動によって出現した可能性が高いことを示唆しているが、確定にはさらなる研究が必要だとしている。
2022年8月にはオーストリアの研究グループが、カンジダ・アウリスの感染拡大には世界で協調して対処する必要があると、学術誌「Microbial Cell」に発表した論文で提言している。「これは感染症に対して我々が以前から抱える脆弱性を突く危機であり、今後も間違いなく、同様の脅威に直面することになるだろう」と記されている。
カンジダ・アウリスは始まりに過ぎない
科学者たちは長い間、気候変動によって気象パターンが変わり、気温が劇的に上昇することで新しい感染症が生まれる可能性があると警告してきた。
日本で初めてカンジダ・アウリスが確認されて以降、極端な気候によってとりわけ真菌感染症が広まったことを示す証拠が記録されている。
気候変動によって大型化したハリケーン・ハービーは2017年、米国テキサス州ヒューストンを直撃し、猛烈な雨をもたらした。その後、水にぬれたがれきなどに大量のカビが発生。住民、特に免疫機能が低下した人たちがカビにさらされたことが大きな問題となった。米国の西海岸でも「コクシジオイデス症(渓谷熱)」と呼ばれる感染症が北へ広がっている。極端な干ばつによって生じた乾燥状態で真菌の胞子が遠くに飛ばされているためだ。
「高温のストレスに反応して、より多くの変異が起きることが懸念されます」と指摘するのは米デューク大学の分子遺伝学者、アシヤ・グーサ氏だ。「特に心配なのは、胞子として私たちが空気と一緒に肺の中に取り込んでしまう真菌です」
グーサ氏らのチームは、2023年1月20日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された論文で、クリプトコッカス症を引き起こすクリプトコッカス・デネオフォルマンス(Cryptococcus deneoformans)に関する研究結果を発表した。これは土壌に存在する真菌で、感染すると命に関わる髄膜炎や肺炎を引き起こす。チームは、この真菌を30℃から37℃に熱すると、遺伝子は変異しやすくなることを発見した。これは真菌に環境への適応力があることを示唆している。
今はまだ研究室での実験段階だが、こうした研究結果は広範囲に及ぶ影響を示す警告かもしれないとグーサ氏は話す。
「真菌は私たちが考えるよりも素早く高温に適応できるのかもしれません。憂慮すべき事態です」
文=SARAH GIBBENS/訳=三好由美子
https://news.yahoo.co.jp/articles/be21c048e1ad7465df1b8ab7ce0ce50f02b39d3a
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■地球はどんどん住みにくくなっていく
地球温暖化以降の初めての「真菌」だという。われわれの体温では通常の「真菌」は生きられないのだが、地球温暖化が進み気温が上昇して生き延びた「真菌」が、これからどのような悪さをするか分からない。
地球はどんどん住みにくくなってきている。人間は、菌やウィルスとの戦いを続けるしかないようだ。
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