■借りたものを返さない日本人 パルスオキシメーターの場合

 

 コロナに感染して「自宅療養」となった人々に貸し出された「パルスオキシメーター」が返ってこない。なんとも、日本人として「恥ずかしい」限りだ。

 

 すべての人が死んじゃったわけでもあるまい。コロナから生還して生きているのに、症状のある間は借りていても、直ったら返さないというのは、人の道を誤っているように思う。

 

 この報道を見る限り、そういう人が非常に多いことに驚くのである。

 

 

 

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「壊れた」「なくした」パルスオキシメーター、多数返却されず…県「これほど返ってこないとは」

2021/12/28 12:48 読売新聞

        

 新型コロナウイルスの自宅療養者に自治体が貸し出すパルスオキシメーターが、使用期間を過ぎても返却されないケースが相次いでいる。特に、感染が拡大した今夏の「第5波」では病床が不足し、自宅療養者が大幅に増えたため急ピッチで貸し出しが進んだものの、回復後に返却を忘れている人が多いようだ。第6波に備え、各地の自治体は回収に追われている。(古屋祐治)

「なくした」

 

 「自宅での容体チェックに欠かせない機器。とにかく皆に行き渡るようにと配ったが、これほど返ってこないとは」。神奈川県の担当者はこう打ち明けた。

 

機器内に指を入れて、体内に酸素が取り込めているかどうか計測するパルスオキシメーター=札幌市保健所提供

 同県は、自宅療養者が自ら症状の悪化に気づけるようにと、昨年12月からパルスオキシメーターの配布を始めた。配布した機器は、回復しているとみられる2週間後をめどに郵便で返送してもらうことになっている。だが、延べ9万個以上を貸し出したものの、現時点で7000個以上がまだ返却されていない。

 県がメールなどで返却を促しても、「壊してしまった」「なくした」と答える利用者もいるという。県健康医療局の担当者は「次に使う人もいるので早く返してほしい」と訴える。

 5月から貸し出している沖縄県では8月、所有していた約1900個のうち1700個以上が返ってこない事態に陥った。急いで追加購入するなどして対応したが、今月18日時点でも約1万6000個のうち約3000個が未返却だ。

国費負担

 

 パルスオキシメーターの購入価格は1個数千円で、自宅療養者向けに自治体が確保する場合は原則、全額が国費負担となる。こうしたこともあり、各自治体は積極的に購入・配布してきたが、「回収」まで手が回らないのが現状だ。

 埼玉県では、貸し出した延べ約2万8700個のうち6835個が未返却(11月末現在)となっているが、未返却者の確認などに時間がかかり、督促作業はこれからという。県感染症対策課の担当者は「携帯のメッセージ機能で効率的にやりとりしながら回収することも考えている。早く返してもらって先々に備えたい」と言う。

 札幌市では、保有する約8000個の約25%にあたる約2000個が返ってきていない。市保健所の担当者は「オミクロン株、第6波と懸念がある。今後、感染が拡大すれば、機器の再購入も検討せざるを得ないが、公金の無駄遣いはできない」と困惑している

 

 待っているだけでは返却に結び付かないため、「積極回収」に乗り出す自治体も出てきた。

 自宅療養者向けに約5万個を保有する東京都は、民間事業者に委託し、未返却者の自宅を訪れて回収する作業を行っている。返却可能な日程を調整してから訪問しており、今月13日現在で未返却は約2・6%の約1300個にとどまっているという。

 都内では第5波のピーク時に約2万6000人の自宅療養者が出た。都福祉保健局の担当者は「ひとたび感染が拡大すると、大量の機器が必要になる。使い終わったらすぐ回収できる体制を整えておきたい」と説明する。

 大阪府では貸与時に返送用の封筒を渡しているが、封筒を紛失するなどして返してもらえないケースでは、回収業務をバイク便に委託している。府感染症対策支援課の担当者は「バイクなら効率的に回収ができる」としている。

 第6波に備え、政府が今月に発表した医療提供体制の計画では、宿泊療養施設などでの利用も含めて全国で約70万個のパルスオキシメーターを確保することになっている。しかし、未返却分を考慮せずに確保数を報告している自治体もあり、厚生労働省健康局の担当者は「いざという時に足りないようでは困る。回収が成功している自治体の事例を参考にするなどして、国としても回収策を検討していきたい」と話した。

  ◆パルスオキシメーター= 患者の指から血液中の酸素飽和度を計測する機器で、体内に酸素が十分に取り込めているかどうかを確認できる。厚生労働省などによると、酸素飽和度が96%以上は「軽症」。93%超~96%未満は「中等症I」で呼吸不全なし、93%以下は「中等症2」で呼吸不全ありと評価される。

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20211228-OYT1T50088/

 

ーーーーーー(以上引用終わり)ーーーーーー

 

■このモラル(民度)の低さ!

 

 借りたものを返さない多くの日本人のモラルの低さに驚くが、もともと「借りた」という意識が低いのかもしれない。

 パルスオキシメーターが貸し出されるのは、コロナに感染して、すぐには入院もできず治療も受けられず「自宅待機」を強いられているような人たちに対してだ。当然、本人も大変で「なんとか治療してもらいたい」という思いが強い。付き添っている家族も同様だろう。自宅待機中の異変を知る手がかりとしての「パルスオキシメーター」である。

 この機器で「血中酸素濃度」に変化があったら、保健所に知らせてほしい。中等症以上なら入院の案内もします。それまでの間、「血中酸素濃度」を測っていてください。2週間を限度に貸し出しますので、期間が過ぎたら返却してください...というものだ。

 

 コロナで療養中のどたばたの中だ。無事に入院できて、治療も受けられてなんとか快癒して退院となるか、あるいは重症化が進んでなかなか退院もできないか、あるいは亡くなってしまうかもしれない。

 また、入院できないまま自宅療養中に症状が緩和して入院の必要がなくなってしまい、コロナも軽快してしまうか、そのまま入院できずに死んでしまうか。

 

 いずれにせよ、時間の経過と共に「パルスオキシメーター」のことなど忘れてしまうかもしれない。

 

 借りたものを忘れてしまうのも問題だが、新聞記事に出るほどの件数が返却されないというのは、日本人の多くに潜んでいる「モラル」の低さが問題かもしれないのだ。

 

 日本人の多くに「税金」を取られているから...という不思議な考え方がある。税金をとられているのだから、国や地方自治体の税金の使い方には神経質になる。国や自治体は、税金の無駄遣いをしている云々とクレームをつける。

 そのくせ、税金が自分のために使われる時には「当然だ」という考えだ。

 

 この「パルスオキシメーター」もその口なのかもしれない。

 

 「パルスオキシメーター」は手のひらに収まる程度の小さな機械だ。価格も数千円程度で購入できる。気分的には、借りたものというよりも貰ったもの...という感じなのかもしれない。

 

 小さなものだし、それほど高価格ではないものだから「返さなきゃならない」という責任感が生まれにくい。コロナの症状が治まれば、自分にとっては不要なものだし、意識の隅にも残らない。自治体から「返せ」といわれるまで思い出すこともないのだろう。

 

 で、面倒くさいから「壊れた」とか「なくした」と言い訳して、それで済まそうというわけだ。

 

 日本人のモラルなんて、そんなものだよ。

 

 その結果、新聞報道にあるような多数の返却されない事例が発生するのだろう。

 

 コロナに見舞われた人は、大変だったねえと同情するが、借りたものを返さない人々に同情は不要だ。コロナから生還しても、「コロナが治って良かったね」と声をかける気にもなれない。

 

 コロナに感染し、国や自治体から「パルスオキシメーター」を借りて返却しないような国民が多いというだけで、もうこの国は終ってる!と思う。

 次に使う必要がある人がいるということに思いが及ばないのだ。つまり、他人に関心がないし、人なんてどうなってもいいのだ。

 

 これでは、「アベノマスク」や「桜を見る会」や「強行したオリンピック開催」などを批判することはできない。税金の無駄遣いという意味では、同じだからだ。

 

 政治家は悪くて、国民は悪くない...などとはいえないだろう。

 

 それが、この国の民度だ。

 

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