■エラー・カタストロフの限界とは?
日本ではコロナウィルスの感染が急速に減少しており、これは「ワクチン投与」の成果だ、マスク装着やソウシャルディスタンス(人と人の距離)を保ったためだ、ステイホームが増えたためだ、などなど様々な意見が飛び交っているが、専門家達も「よく分からない」というのが実情のようだ。
ここで注目されるようになったのは、ノーベル賞学者のドイツのDr.マンフレート・アイゲンの提唱する「エラー・カタストロフの限界」だ。
詳細は、以下に詳しく解説されている。東大の児玉氏が応えている。
「エラーカタストロフの限界」を、分かりやすく説明すると...
「エラーカタストロフの限界」
ウィルスは感染した人の体内で増殖する際に、RNAの複製を作るが、ある一定程度の複製エラーが生じる。このことで、デルタ変異株のような、より感性せいの高いものも生まれてくる。エラーが繰り返されて積み重なると、増殖が困難になり最終的には自壊して、自然に感染は収束する。
これがDr.アイゲンの提唱する「エラーカタストロフの限界」として知られている。
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新型コロナの「急速な収束」はなぜ起きたのか:児玉龍彦氏に聞く「エラー・カタストロフの限界」との関係は
石田雅彦ライター、編集者
10/5(火) 13:44
(写真:Keizo Mori/アフロ)
この夏にあれだけ猛威をふるった新型コロナが、ここにきてなぜか急速に収束している。収束の理由は、ワクチン、季節要因、行動変容などの説が出ているが、新型コロナの変異は免疫不全の患者の中で起きた説もある。この説に関係する「エラー・カタストロフの限界」とともに収束の理由について考える(この記事は2021/10/05の情報に基づいて書いています)。
変異株はどうやって生まれるか
一般的に、新型コロナウイルスのような存在はウイルスだけでは増殖できず、感染してヒトのような宿主のタンパク質(複製や転写に必要な酵素)を利用して増殖する。生命の定義にはいろいろあるが、自分だけで増殖できないウイルスのような存在は生物と無生物の中間のようなものだ。
一方、生命の進化は、遺伝子が複製されるとき、エラーや遺伝子の組み換えなどによって起きる。ウイルスも宿主の酵素を利用して増殖するため、複製の際にはエラーが起き、変異する。
新型コロナでいえば、英国で広がったアルファ株、南アフリカ由来のベータ株、インドで変異が起きたと考えられる感染力の強いデルタ株などの変異株がそれだ。タンパク質の主な変異は、アルファ株がN501Y、ベータ株がN501YとE484K、デルタ株がL452RとE484Qになっている。
それぞれの3ケタの数字は新型コロナが感染する際に必要なスパイクタンパク質のアミノ酸配列の番手を示し、数字を挟むアルファベットはアミノ酸の略号記号で左端のアミノ酸が右端に変異したことを表す。例えば、アルファ株のN501Yは、501番目のアミノ酸配列でNのアスパラギン(アスパラギン酸ではない)がYのチロシン(タイロシン)へ置き換わっているわけだ。
では、こうした変異はどうやって起きているのだろうか。英国などの研究グループが2021年2月に『nature』に発表した論文(※1)によれば、こうした変異は免疫力の落ちた患者個人の中で起きた可能性があるようだ。
ゲノム修飾(エピゲノム)による創薬研究を進める東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦氏(東京大学名誉教授)もそう考える一人だ。無症状患者への積極的PCR検査を提唱してきた児玉氏は、東京大学アイソトープ総合センターのホームページへ2021年8月に出した資料で、新型コロナウイルスの複製エラーの修復(校正)システムに変異が起き、多様な変異株の出現になったのではと述べている。
以前の研究から、新型コロナウイルスを含むコロナウイルスの仲間は、ほかのRNAウイルスにはない複製エラーを修復(校正)するための一群の酵素を持つことがわかっていた(※2)。重要なのは「nsp(non-structural protein)14」と呼ばれる切断酵素だが、これはほかのRNAウイルスに比べて約3倍も長いゲノム(10k塩基:30k塩基)のコロナウイルスが、長大なゲノムに生じる複製エラーを修復(校正)するために獲得したシステムと考えられている(※3)。
前出の資料の中で児玉氏は、新型コロナウイルスの増殖のスピードがなぜ速いのか正確にはまだわかっていないとしつつ、中国の武漢株が変異して中東からヨーロッパへ広がったD614G(D=アスパラギン酸、G=グリシン)変異株が、その後の変異の根源ともいえる「幹ウイルス」としている(※4)。そして、その後の変異株を表すN501YといったウイルスでもNのアスパラギンがYのチロシンに変わっただけでなく、その他の多くのアミノ酸や核酸の配列で変異が起き(※5)、L452R変異のデルタ株でも多くの亜株がある(※6)ことに注意すべきという。
世界全体と日本を含む主要国の新型コロナ感染者数の推移。日本(Japan、紫)と米国(Unaited States、茶)の感染者数はここ約1ヶ月で急減している。世界全体も秋口になって減少傾向にある。Via:Our World in Data 'Coronavirus Pandemic (COVID-19)
エラー・カタストロフの限界とは
こうした多様で急速な変異が、大勢の感染者で同時に起きて固定化されたとは考えにくい。前述したように、臨床研究の症例報告などから、一人の患者個人、特に免疫不全の患者の中で変異が急速に起き、それが広まったと考えられるのだという(※7)。
このように多くの変異がある新型コロナウイルスだが、複製エラーは合目的的ではなくランダムに起きるはずが、なぜ感染力が強くなったりするのだろう。また、新型コロナがなぜここにきて日本では急速に収束しているのだろうか。
これらについて児玉氏に直接、メールで質問した。それによれば、新型コロナウイルスでは「幹ウイルス」とも呼ぶべきD614G変異株で「正の選択(Positive Selection、筆者注:突然変異が生存に有利になる選択)」がかかっているという。
児玉「注意すべきは、新型コロナウイルスにD614Gの変異とともにnsp12(筆者注:前述した酵素群の一つ)などに別の変異が入っており、D614Gとリンクした他の変異がこの『正の選択』に関わっている可能性も否定できません」
だが、新型コロナウイルスには複製エラーを修復(校正)する酵素がある。しかし、多様で急速な変異が起きているが、そうなるとウイルスはどうなるのだろうか。
児玉「進化生命学には、ノーベル賞受賞者でもあるエイゲン(Manfred Eigen)が1971年に予言(※8)した『エラー・カタストロフの限界(ミスによる破局)』という概念があります。新型コロナウイルスの変異は、本来ならこのエラー・カタストロフの限界によって自壊するはずですが、デルタ株ではこの限界を超えて感染が広がりました。しかし、これは前述したように免疫が抑制された一人の患者個人の中での進化で、ヒトの身体の中にはウイルスのRNAを変異させる酵素(APOBEC遺伝子群)があり、そこで治療薬やワクチンに対する抵抗性を持ったウイルスに進化したと考えられます。しかし、免疫力のある一般の人では弱くなるでしょう」
新型コロナウイルスがエラー・カタストロフの限界によって自壊し、それが影響して収束したのか、その関係についてはまだよくわからない。だが、免疫不全の患者などでの変異を注意深く観察することで「正の選択」への変異を防げるかもしれないということだ。
児玉「私は東京型・埼玉型の流行の時にピークアウトを考えたのですが、その後は確かに日本国内では収束に向かいます。しかし、東京オリパラのため、入国が緩和されたことでアルファ株、デルタ株、南米起源の変異株と、世界の変異株が日本へ容易に入り込んできています。しかもその多くは一般の人でなく、免疫不全と特定の方に遷延した感染の中で起こっています。別の特殊な変異が起こらないか、世界で協調して監視する必要があります」
かなり強力な感染防御対策を講じているニュージーランドでも、感染力の強いデルタ株はなかなか防げないようだ。そのデルタ株が支配的な日本で急速に感染者数が減っているのは妙だが、エラー・カタストロフの限界によって自壊しているのだとしても感染防御の手を緩めてはいけない。
また、仮に新型コロナウイルスが弱毒化し、無症状や軽症の感染者が多くなっているとすれば、その個人の中で変異株が誕生する危険性もある。季節性の要因も否定できないのだから、今後より気を引き締めて第6波の到来を防がなければならないだろう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20211005-00261667
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ゲノム変異、修復困難で死滅?
コロナ第5波収束の一因か
10/30 16:22
研究チームが考える酵素の変化がウイルスに与える影響
新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノム(全遺伝情報)の変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を国立遺伝学研究所と新潟大のチームが30日までにまとめた。
8月下旬のピーク前にはほとんどのウイルスが酵素の変化したタイプに置き換わっていた。このウイルスではゲノム全体に変異が蓄積しており、同研究所の井ノ上逸朗教授は「修復が追いつかず死滅していったのではないか」と指摘する。
研究は10月に開かれた日本人類遺伝学会で発表した。
この酵素は「nsp14」。
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/517566
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■マンフレート・アイゲンの「エラーカタストロフの限界」
マンフレート・アイゲン(ノーベル化学賞受賞)という方が提唱した「エラーカタストロフ」の限界(自壊)とは、ウイルスが変異を蓄積する事で感染性や複製(増殖)が出来なくなる理論。
マンフレート・アイゲン (Manfred Eigen、1927年5月9日 - 2019年2月6日[1])はドイツの生物物理学者。ゲッティンゲン市にあるマックス・プランク生物物理学・化学研究所の所長、理事を務めた。
1967年にロナルド・ノーリッシュ、ジョージ・ポーターと共にノーベル化学賞を授与された。
Dr.アイゲンの提唱する「エラーカタストロフの限界」が起きて、いまコロナ感染が激減していると考えられている。すなわち、いまコロナは自然に自滅したのだ。
いままで増えていたのは対策が後手後手で遅れたためと言うしかない。
この冬に、また増えると予想される。
現状は「エラーカタストロフの限界」理論で説明できる。次々に現れるウィルスの新しい株は、変容して流行するが元の株の特性がなくなり、やがて自然淘汰に至る。コピーにコピーを繰り返しているうちに、劣化していくのである。コピーの回数と時間の問題で、流行は収まってゆくのである。
だが、今まで流行していた株が自滅しても、別の株が入ってくれば同じことが繰り返されるので、感染しない、移さないという対策を講じておかなければならないし、医療体制も整えておかなければならないということになる。
おそらく、今まで主流だったデルタ株が終焉して、感染者が激減しているが、また同じような感染爆発が起きる可能性は高い。
どんな理由にせよ「コロナ感染が減少」したからといって安心してはならない。
感染の防御対策を十分にとっておくべきであろう。
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