そこから歩いてすぐの場所にあるレストランの前で、オレ達は例のソンテオの運転手が紹介した旅行業者と、バンビエン行きのバス代について値切り交渉を行っていた。
バンビエンまでの所要時間は、約4時間。
一日の移動時間としては楽勝の域に入る。
『ねーねー、一人260バーツまで下がったけど、どーする?』
実はこの時、オレは既にこの旅の事なんかどうでもよくなって来ていた。
カオリの声を聞く事さえしんどくなっていたからだ。
『うん、エエんちゃう?それにしよ』
本来なら、オレはこんな個人のツアー会社を使って公共バスの倍額以上する乗り合いバスなんか使う事は無い。
が、この時はバスターミナルのある場所を、ガイドブックで確認しようとする基本的な作業さえ億劫だった。
言っとくが、オレはビエンチャンからルアンパバーンまでの移動など今まで経験した事は無いし、その中間にあるバンビエンなどと言う街にも行った事が無い。
ビエンチャンはバスで日帰り、ルアンパバーンはかなり前にツアーバスで行って2泊しただけだ。
最後に訪れたのはもう6年くらい前になるのだが、正直オレにとってラオスというのは退屈なだけのつまらない国だった。
だからほとんどリピートしていないのだ。
そんなオレが、今回何故ラオスを旅のルートに組み込んだか?
カオリが行きたがっていたからである。
以前から書き記して来た通り、旅というのは計画している時が1番楽しい。
そして今回の旅についても、オレは楽しみながらもギリギリまで悩んでいた。
バンコクに着いたら、そのままカンボジア国境まで行くか、それとも西側のミャンマーとの国境に行くか…
そんな風にあれこれ考えていたある日、カオリからメールが入ったのだ。
【アタシ、ラオス行きたいなー。食べ物もタイよりは美味しいしさー】
(ラオスか…その選択肢は無かったな。ちょっといろいろ調べてみっか。一人で行った前回とみんなで行く今回の旅では、またいろいろ違って見えるかも知れんしな…)
ネットを開くと腐るほど出て来るラオスの旅ブログ。
そのほとんどがルアンパバーンからビエンチャンに向かい、その後タイに入国するというルートに関する記録とインチキグルメだった。
(ラオスのカオソーイってみんな絶賛してるけど、そんなに美味かったかなぁ?確か坦々麺まがいのフォーみたいなんに香草とかをガンガン乗っけるヤツやったと思うけど…おっ、鍋かぁ~。そういや前にラオスでムーガタ(ジンギスカン風の鍋料理)みたいなヤツ食ったけど、アレは悪くなかったなぁ)
その後、料理の写真をあれこれと見ているうちにメキメキ湧いて出て来るオレのシェフ魂(と言ってもオデンくらいしか作らんが)。
(うん。行ってみるか、ラオス。んで、自分の舌で確かめて来よ)
そんな経緯から決まったラオス跨ぎのルート。
が…
ほんの少しでも、ガキパッカーやカオリの舌なんかを信じたオレがバカだった。
バス待ちの間に注文した史上最狂の激甘アイスコーヒーに悶絶しながら、オレはさっき食べたカオソーイを「美味い」とはしゃいでいたカオリに、一人頭を抱えるしかなかった…

ビエンチャンのど真ん中で、ついにカオリの奴隷と化すイソップ兄弟。
それにしても日傘かよ?
スゲェな、コイツ…