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PULLING PUNCHES

JOHN JONEACH の作業場

 
    ある朝、ヨーロピアンのかかとを
カツカツ鳴らし、手に持った
メタルテープを僕に手渡しながら


      よぉ  JONEACH ,これ聴けよ
      涙出んぞ、マジで!  


  TOR が云った。


     僕のウォークマンから
 その時流れていたのは

      ビッグカントリーの
      ビッグカントリーや

      ローマンホリデーの
      俺らはハリキリボーイ

      イエスのロンリーハートとか

      ハノイロックスの
      マリブビーチの誘惑だったり。

    潰しのカバンにはデンマンブラシと
  AXIAの薄型のカセットテープが数本。
  取っ手に赤いバンダナでおにぎりが
   3個しばってある。


     今日は TOR のプレイリストの
 試聴日となった。


 耳も襟足も隠れる程伸びた髪の下。

 イヤホンの線はメガネのツルの様に
 耳に掛け、そのまま後頭部へと流れ
 ツメエリの内側から背中を這わせて
 胸内ポケットの本体へと繋がってる。

    セッティングは常に盤石だ。
    

     チャイムが鳴り
 1時限目が始まると同時に
 ウォークマンの再生を押す。

 
     僕の視線のレーザービームは
 黒板を突き抜け
 コンクリートの壁を突き破り
 食堂のテラスを抜けて
 おばちゃんが煮込む寸胴のカレーの
 隠味の向こう側へと、そして更に
 時間の向こう側へと貫かれていた。


     瓦れきと煉瓦の町並みの中、大衆は
 何処に向かって歩いているのか。
「埃り」だらけの友は皆みすぼらしくも
「誇り」に満ちてる。
 ここは民衆勝利の歓喜に沸く
 凱旋パレードの中。
 そして僕もその中にいた。






 となりからそっと.破いたノートを
 折り畳んだ紙片を手渡された。
 それ を開きながらいつもの如く
 わざとまわりを見渡すふりをすると
 リーゼントの先端だけ黒板を向き
 精一杯横目でこちらを見る男がいる。

     いつもの如くTOR  だ。そして
     いつもの如くTOR からの それ だ。



       アラーム宣言  感動しただろ?
   今度は俺の詩を読め。
   俺の魂の詩で感動してくれ!
                                                                」


     いつもの如くの それ はまるで
 Modsの パクリのような聞いた事ある
 フレーズで埋め尽くされている。

 ヤツをチラ見してやると
 精一杯の横目でこっちを見ながら
 恰かも初めて書き下ろしたかの様に
 満足げに何度も小さく頷いている。

 小さく折り畳んであった紙には
 恐らく四年生から同じであろう筈の
 筆跡で書き殴られ、更に
 
 →→→ウラもよめ

 と書いてあるのが常だった。



   チャイムが鳴り
 TOR  はニヤニヤしながら
 こっちへ…   やっぱり来ると思った。

 上履きのかかとを踏んで
 突っ掛け歩いてくる。

 両手をつっこんでる
 ワタリが広く裾がつぼまった
 つまりただの ボンタン を
 ヤツは  デヴィッドボウィ の
 ステージ衣装だと云い放つ。


「すげぇ良かったよ ! 」

「だろぉっ ! わかるか JONEACH ! 」



 良かったけど涙が出る程じゃ…
 とは… 云えなかった。


 奴の感性が鋭いのか…(笑
 僕の感性が鈍いのか… 笑)

     

    30年以上経って
 やっぱり、いい曲だね。
 君が正しかったよ。



     DEAR   TOR.


                               J. JONEACH


The Alarm  /  'Marching On'     1983