先日は「ゲバルトの杜」をみて
構成の悪さと
酷い不協和音に耐え切れず
途中で退出してしまったのだが
「関心領域」は終始地響きのような
不快音が流れていたとはいえ
不安感と恐怖をあおられて
最後まで見入ってしまった

計算されつくした音響に加え
考えさせる映像がちりばめられ
素晴らしく完成された映画であった


私はアウシュヴィッツに関して
それほど知識をもっておらず
観終わったあと調べてみたのだが
主人公のルドルフ・ヘスは実在の人物で
当時同じ名前の重要人物が2名いたらしい

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ルドルフ・ヴァルター・リヒャルト・ヘス
1894/4/26-1987/8/17
ナチス副総統
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ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘス
1901/11/25-1947/4/16
ナチスSS将校・強制収容所初代所長

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今回の主人公は後者であり
終戦後に絞首刑に処されている

ちなみに前者はヒトラーの側近だが
経歴をみるとうまく立ち振る舞い
最後は刑務所内で死去
なんと93歳まで生きたらしい

この映画が
どこまで史実に即しているのか
わからないのだが
ルドルフ・ヘス(後者)と
その家族が
隣り合わせの二つの現実のはざまで
少しづつ狂っていく描写が生々しい

妻の母と娘は
その状況に耐え切れない様子だったが
主人公、妻、息子には
異常な言動が目立ってきた

諸説はあるようだが
時代は正にガス室を用いた
ユダヤ人へのホロコーストが始まる前夜

最後の主人公の嘔吐は
サルトルのいう嘔吐と同じものなのか?

ふと現実に戻ると
今のイスラエル軍のガザ侵攻を
想起せざるを得ない

それでもそれを見ないようにして
無心に部屋の掃除ができるものなのか?

マンガ「静かなるドン」の近藤の言葉
「憎しみの連鎖は断ち切らねばならない」


さもなければ
いつまでも

戦争が終わることはない