マドンナとのほろ苦い邂逅
マドンナとの邂逅(会った訳じゃないが)は忘れられぬ
大学3年の晩秋
あの頃、キャンパスのスターは〈体育会〉の連中だった
ただし小学校からエスカレーター式に入学…という但書つき
いつも黒い詰め襟で、秋になれば羽織ったベージュのコートの襟を立てた。あの連中はガチでオーラがあった
■from プレイバック昭和 マイライブラリー■
時代の先を行き、肩で風切る風情
何を間違ったか、そういう連中の集まるゼミに入った
最初は水と油だったが、徐々に馴染むようになった
で、そういう連中が、〈マドンナのニューアルバム買ったぜ〉
…と、怪しい写真のLPを意気揚々と掲げた🍩
ど…どういう音がするのだ、あのLP
基本LPを〈買う〉習慣を持たぬ私は、貸しレコード屋でマドンナ〈ライク・ア・バージン〉の(当然)日本盤をレンタル カセットデッキの録音ボタンを押しつつ、スピーカーから流れる音に耳傾けた
…ボボボボ…ボボボボ…ボボボボ…
(平坦なシンセサイザーの音色)
何これ 音のお経か
つまらねぇ…と思いつつも、あの襟立てた連中に遅れをとる焦燥に駆られ、聴き続けた。…結果、諦めた
大学時代(1982-1986)は〈80年代サウンド〉の絶頂期だった その2枚看板はマドンナとマイケル・ジャクソンに違いない
■from NME■
マイケル・ジャクソンは〈MoFi45回転盤〉が近々リリースゆえ、その折に触れるが、マドンナといえばあのイントロが思い浮かぶ
で、ふと思った
CD黎明期の〈ライク・ア・バージン〉はCDで聴くべきか、あるいは伝統と貫禄のLPなのか
さあ、本日も比較検聴
大阪の中古レコード店〈Waxpend〉にオンライン注文した、巨匠ボブ・ラドウィックのカッティングとなるUSオリジナル盤🍩
80年代のLPはボブ・ラドウィックのカット(RL刻印)でも、驚くほど安い…値段を忘れたほど、安い
で、〈ライク・ア・バージン〉で検聴スタート
えっ…という程、丁寧に造られた音
…ボボボボ…のインパクトは流石だが、バランス的に突出しすぎず、ドラムスの自然でパンチの効いた音も好ましい
これなら22才のヨコカワ君もナットクした筈()。
が。シンセサイザーのサウンドは、どこかゲーム音楽のようだ
ドライというか枯れ切った、クールというか冷め切った音にも聴こえ、レコード再生と相性が悪いかも🤔
あるいは、私と曲の相性が悪いのか
…で、次の曲〈オーバー・アンド・オーバー〉になれば、これはモロ、ゲーム音楽じゃね
新しいLPならばどうか…と思い、1990年のベストLP〈イミュキュレート・コレクション〉に針をおとす🔊
ほほぉ。ぐっとまとまった、安定感あるサウンド
ゲーム音楽からデジタルミュージックに昇華()の感がある
6年が経ち、ようやくレコードがマドンナに追いついたか
一方で1984年、マスターテープを前に〈この音、どう切れば好いのやら…〉と戸惑った、ラドウィックの顔も浮かぶ
吾らが青春のデジタルサウンド
で、いよいよCD
これも〈イミュキュレート・コレクション〉
(とかく言いつつ、いろいろ所有)
…ぅゎゎわわわぁぁっ
すげぇ、この胸のすく音
覇気あふれる、時代を切り拓いたるな迫力
シンセサイザーの音もひとつひとつ腑に落ちる
〈新しい音〉を手に入れた、プレーヤーやエンジニアの秘めやかな興奮もつたわる
そもそもアルバム〈ライク・ア・バージン〉はデジタル録音の嚆矢で、オリジナルマスターテープ自体がデジタルなのだ
次の曲〈マテリアル・ガール〉になればデジタル色は更に強まる無機的で無表情で突き放したようなサウンドは、〈物欲女子
〉な歌詞にもピッタリ
続く〈クレイジー・フォー・ユー〉
一点の雲もない、あけっぴろげな空間で、ディーバがご宣託を垂れる…な雰囲気
〈イントゥ・ザ・グルーブ〉…〈リヴ・トゥ・テル〉…
もはやデジタルサウンドの極地…〈音〉にフォーカスすれば、すこぶるハッピーになれる曲と(今更)気づいた
聴き始めれば、止まらぬ
1980年代デジタルサウンド侮れず…CDの圧勝だった
そういえば10年ほど前、ボズ・スキャッグスとTOTOの元メンバーのジョイントコンサートに行った
お目当てはボズだったが、TOTOの〈アフリカ〉が流れ、オジサンとオバサンは総立ちとなった 一瞬であの日に帰った
シンセとエコー満載のやや過剰感ある、正調80年代サウンド
多分に演劇的で作為的だが、吾らはこの時代を生きた
年功序列や年金制度の崩壊で割を喰った、吾が世代
だが、こういうサウンドを持った吾らは疑いなく、幸せだ
■from News Paravi■