YouTube〈みのチャンネル〉で思った事
もう1箇月前だが映画《エルヴィス》はすこぶる楽しめた
〈スーパースターの”伝説”の裏側。実話。〉なる惹句は嘘じゃない
が、ウィキペディアはじめネット情報、及び《エルヴィス・ミーツ・ザ・ビートルズ》⬇に目を通した人ならば、あれっという〈新発見〉はホボホボ見当たらぬ
とはいえ普通の音楽ファン(=《エルヴィス・ミーツ・…》読む前の私)ならば、え”っというエピソード満載かも知れぬ
私はといえば、ともかくエルヴィスの後見人的マネージャー(大佐)役、トム・ハンクスの名演技にやられた
■from VULTURE■
映画の肝はといえば、エルヴィスを金づるとしか考えぬ(と見える)大佐と、彼に依存しつつおのれの道を往きたいエルヴィスのせめぎあい…と思われる
大佐がエルヴィスを口説き後見人に収まるシーン…あるいはエルヴィスの堪忍袋の尾が切れ、大佐から逃げようとした所、呼び止められ、また引き返し元の木阿弥となるシーン🎥
エルヴィスを手玉に取る大佐の超絶技巧を、トム・ハンクスは見事な説得力で演じ切る…すげぇ。さすが稀代の名優
主役のオースティン・バトラーの熱演も見応えあった
凝りに凝った、ゴージャス系の映像も趣味にあった
…が、長い
いい映画だが、1度見れば十分な気がする
で、YouTube《みのチャンネル》でみの君が映画《エルヴィス》の感想を語られた
基本は辛口、映画の方向性や立ち位置が曖昧…な批判(と思われる)
で、個人的に、〈おっ〉と思ったのは、〈サンレコード時代が大幅にカットされた〉…という不満の箇所
ジョン・レノンも生涯ただ一回、エルヴィスのLA宅で会った際、〈サンレコード時代は好かったが、今のアンタは…〉と喧嘩をふっかけた(やめときゃ好いのに)
エルヴィスにディープに入ったファンは結局、〈サンレコード時代〉に行き着く(ようだ)
エルヴィスのデビュー盤は〈サンレコード〉からリリースされた🍩
映画でも印象的に流れた〈ザッツ・オーライ〉
明るいのか冥いのか、前向きなのか後ろ向きなのか、よう分からぬ曲調
当時〈気持ち悪い〉と思った人は多かったが、的外れとは言えまい。なにか、見ちゃいけぬものを見た、あるいは聴いちゃいけぬものを聴いた気分
なにか人間のタブーに触れたような、怪しい気分
この圧倒的に原初的で獰猛なパッションが、正にロックの歴史を切り拓いた
サウンド的なニュアンスはストリーミング音楽でも十分に分かるが、いわゆるオリジナルはEP盤及びSP盤だ🍩
EP盤の市場最高価格は、実に『124万円』
こりゃ、買えぬ
で、SP盤の最高価格は、『33万円』
これも、買えぬ
…が、SP盤が気になる
経験的にSP盤の音は、CDやハイレゾは勿論、LPやEPよりも断然〈生々しい〉
78回転ゆえの情報量(45回転の1.7倍、33回転の2.3倍)、および余計な手を加えぬ(加えられぬ)往時の録音環境ゆえと思われる
で、来る日も来る日もeBayで〈ザッツ・オーライ〉の出品を見続けた…楽勝で20万超え…無理ね
が、あるとき〈出物〉が現れた
〈端の欠けた〉(ボンドで修復)ザッツ・オーライ…。
当然、同盤ではありえぬ値段だが、まだ価格交渉(値引き)の余地アリとも思われる
私はふかい息を吸った
…私の関心はつねに〈検証〉に在る
途中からお終い迄、聴ければ好い
で、アメリカのセラーに出品価格の半額でオファー
…速攻で〈オファー受諾〉の返事が来た
あ”==っ、もっと安い値段でオファーすればよがっだ
ともあれ
ザッツ・オーライな廉価で()、SP盤が手に入った🏠
さあ、検聴ぢゃ
…『30万円』もとい、エルヴィス・デビュー盤の〈当時音〉や如何
ほおおっ、生々しい。
エルヴィスの声はややぼやけた印象だが、中間部スコッティ・ムーアのギターや、特に背後でスティック()がカチカチいう音はリアル
CDやEP/LPじゃ出ぬ音だが…『30万円』ねぇ
まあ歴史的記念碑的価値…ゆえか。
私のような物見遊山的なファンは欠けたSPで十分かも
イマイチ気分が上がらぬのも、理由がある
実は()エルヴィスのSP盤、すごい音なのだ
いっときSP盤に狂った時期があった
もっぱら大昔のクラシック音楽だったが、好いROCK/POPSのSP盤はないものか…と思った
SP盤は1950年代半ばでおおむね使命を終えるがゆえ、いわゆるロックのメジャー処は(ほぼほぼ)引っかからぬ
あっ、エルヴィスが居るじゃない
で、大阪の中古販売店〈STRAIGT RECORDS〉の出品リストをいろいろ見、〈ラブ・ミー・テンダー〉をオンライン購入
SP盤にピッタシな雰囲気…と思えた
同店の(見知らぬ)女性スタッフも、発送完了のメールで、〈エルヴィスの声にドキドキしました〉と書かかれた
届いたるSP盤をターンテーブルにのせた🍩
地方インディーレーベル〈サンレコード〉から世界的大企業〈RCA〉に移籍して間もない頃の録音🔊
販売枚数も飛躍的に伸びたがゆえ、価格もサンレコード時代と比べれば10分の1にも満たぬ
で、その音は…
…ぅっ、ううっ、う”う”っっ…
こりゃ、すげぇ
エルヴィスが目の前に居る…というか、目の前に居てもこの『声』は聴こえまい。
SP盤といえば、激しいチリチリ音の彼方にか細い声やら楽器やらが聴こえるイメージかと思うが、さにあらず
これぞ電気再生のマジック
莫大な資産と最新テクノロジー、生ギター一本というシンプルこの上なき構成あるがゆえのクリアでリアルで迫力満点の音だ
エルヴィスの口の中も鼻の中も()見えるような
ドキドキ…じゃ済まぬ、ドックンドックンな感じ。
エルヴィスのサンレコード時代とそれに続いたRCA初期は、SP盤で聴きたい…と思うが、どうかね、みの君
SP盤だとエルヴィスの並ならぬテンションとパッションが伝わる
その熱量は心も身体も擦れ切れた最晩年すら変わらぬ
映画の最終盤、エルヴィスのピアノ弾き語りで〈アンチェインド・メロディ〉が歌われる
映画を見る以前から幾度もYouTubeで見たシーンだが、これほどの熱量がこもったプレイは他に考え難い
ビートルズは4人居たが、たった1人でこの熱量と前代未聞のプレッシャーを抱え込むのは、人間の限界を超える
この並外れた熱量は、SP盤でこそ聴ける…と満悦
で、ふとSPを入れたビニール製アルバムを検めれば…
割れた〈ハウンド・ドッグ〉を発見
〈ハウンド・ドッグ〉はご贔屓ゆえ最も外側に収めたのが運の尽き。これで割ったの3回目ぢゃね
また〈ハウンド・ドッグ〉買わねば、ならぬのか
売るにせよ、割れた〈ハウンド・ドッグ〉じゃ、1円にもならねぇ…つらい
道楽がSP盤にも及ぶと、1人の人間の限界を超える