You Tubeやブログで和製レコードが大注目
(私には)意外だったが、目下、海外のレコード愛好家の間で《日本のレコードは音が悪い(良い)》論争が勃発中
ここで言うレコードは基本、圧倒的に英米のアーティストが多い〈洋楽〉に限られる。
私自身は2013年の夏、ディスクユニオンで買った《アビーロード》英国オリジナル盤を聴き、〈英国の連中は、かくも良い音でビートルズを聴いたわけかっ〉と思った。
日本の中古市場でも国内盤は、いわゆるオリジナル盤と比べれば(一部の例外を除き)格安。
が、海外のYou Tubeやブログでは賛否両論交え、日本のレコードが熱い視線を浴びる👀
まず彼らによれば、日本の洋楽レコードのメリットは以下👇
① "ジャケットなど装丁が上等"は、日本人の几帳面なメンタリティや卓抜な職人芸、あるいは〈舶来品(=高級)信仰〉のなせる技とも思われる。
②”保存状態が良好” ③"レコードのノイズ僅少”もかかる日本人的メンタリティの流れで理解可能か。
更にソニーやデノン、パイオニア、テクニクス等々で名を馳せた④"メイドインジャパン神話”も、同じ文脈にあるやも知れぬ。しかも本国オリジナル盤と比べれば⑤"比較的廉価”は疑いない。
…と、①〜⑤のメリットを受け、日本独特のOBI(帯)や各種インサートや読めない(笑)日本語の解説等々が、ガイジンの⑥"マニア心(収集欲)を刺激”…と思われる。
この音だ❢…と思った、ツェッペリン国内盤
さて。日本のレコードのデメリットに目を向ければ、以下👇
完全に〈音質〉に寄った見解で、①”マスターテープのダビング由来の音質劣化”は否定しようがない。
たとえばビートルズの当時物・東芝音楽工業製LPは半透明の赤色ゆえ〈赤盤〉と称され、〈帯付き〉美品となれば英国オリジナル盤も真っ青な高額盤となる。
が、たとえばビートルズの海外スレッドで〈赤盤〉が語られれば、〈日本にはマスターテープのダビングまたはダビングのダビングが送られ、高音質の筈がない〉という否定的見解にも行き当たる。
これは日本盤に限らず、非オリジナル国に共通の弱点と他ならぬ。少なくともオリジナル盤と国内盤には、明らかな音質面の差がある。
私のオリジナル盤初体験は高1だった。ホームステイでイギリスのオックスフォードに滞在、現地のレコ屋でイエスの3枚組ライブ盤《イエスソングス》を買った。
親からホームステイ中の予備費(❓)を渡され、当初からレコード買う気満々だったが(笑)、どうせなら日頃は手の届かぬ3枚組が好い…と思った次第。
結果、今日に至る迄の愛聴盤となったが、殊にギターのキレッキレな音に驚いた。高1の頃は〈音質〉など気にも止めなかったが、他(=国内盤)とだいぶ異なった印象だった。
あるいはその翌年。米国出張に赴く父親に〈これが欲しい〉と、〈Billy Joel "52nd Street"〉と書いたメモを渡した。当時の最新盤だった。
内容は(私的に)ガッカリだった。また〈ビッグショット〉を始めとする、重い、太い音、あるいは〈どぎつい音〉が耳に障った。〈う・る・さ・い〉…と思った
要は②”まろやかでおとなしい音、低音迫力の欠如”な国内盤の音に慣らされ、米国オリジナル盤が、迫力満点すぎ、低音強調すぎと聴こえた訳か。
〈中庸〉や〈調和〉を尊ぶ耳には強烈すぎた
が、それが製作者やミュージシャンの意図した音ならば、異論を差し挟む余地がない。〈餅は餅屋〉〈馬は馬方〉〈海の事は舟子に問え山の事は樵夫に問え〉…
③ "高名な高音質LPリストの非掲載"はその帰結とも思われるが、若干の疑念もあるため、これは別の回に譲る。
が、国外で日本盤ツェッペリンLPには一定の評価がある。You Tubeを見れば、レッド・ツェッペリンの日本初出LP(しかもプロモ)をほぼほぼコンプリートしたアメリカ人と遭遇
〈帯付き美品〉を追い求め、解説書や読者アンケート葉書の有無にもこだわった求道心には頭がさがる
■from You Tube "My Led Zeppelin 1st Japanese Pressings @ Jimi's Vinyl Kitchen ■
さて。それほどイイのか、レッド・ツェッペリン日本初出盤
You Tubeでレッド・ツェッペリン日本盤を褒め称える複数のアメリカ人と出逢い、好奇心に🔥のついた私はディスクユニオン新宿ロック館に出向き、初出盤を漁った
私に頼まれるがまま、店員は《レッド・ツェッペリンⅱ》の初出盤を店内のスピーカーで流した
〈胸いっぱいの愛を〉のギターソロが流れ、他の店員()とヲタク談義中だった、怪しげな中年男(
)が目を剥いた。
〈こ…これはっ
〉
〈ツェッペリンⅱの国内盤ファーストっスよ〉
〈すげぇ…US盤や、UK盤に負けねぇ…〉
軍資金を使い切ったらしき中年男は、なにか悔しげな顔でスピーカーを眺め続けた。店から出る彼の背中を見つつ、私は店員に言った。〈これっ、くださいっ〉。
あれから、ツェッペリンⅰ,ⅲ,ⅳの国内初出盤も買った。廉価とは言えぬが、英国や米国のオリジナル盤(美品)に比べればヒトケタ安い
序ながらツェッペリンはイギリスのバンドとはいえ、レコードの版元は米国アトランティック社で、アメリカ録音のテイクもあるため、英国と米国のどちらがオリジナルか意見が分かれる。
ザックリ言えば、神韻縹渺たる英盤 豪放磊落な米盤
で、国内盤の音
私は2013年夏のアナログ開眼以来、ツェッペリンの英国オリジナルや米国オリジナル、あるいは世評の高いクラシック・レコーズのリイシューを買い集め、聴き続けた。
どうにも音のバランスやフォーカスに馴染めなかったが、国内盤を聴き、〈これだっ、この音だっ〉と思った。
〈貴方を愛し続けて〉の幽玄なイントロが、クッキリ聴こえる。あの当時、頭の中で延々と鳴った音は、これだった。
ひとつひとつの音がその楽器〈らしい〉、あるべき音と感ぜられる。またロバート・プラントの声も定位的、音量的にバックとバランスがとれ、溜飲が下がる。
音域で言えば中音域(=おおむね声の音域)に寄った音と思われ、すこぶる聴きやすい。
思えば昔のステレオセットはラウドネス・スィッチ付だったが、低域(プラスものによれば高域も)をブーストし、小音量でも楽しめるのがウリだった。
すなわち(私を含め)日本人の狭隘な住環境で、控え目な音量かつラウドネススイッチONで鑑賞するならばベストな音とも思われる。
もう、これだけあれば、何もいらない
と思いつつ、英国オリジナル盤に手を伸ばす。
音は細っこい…気がする。バランスや定位も、いかがなものか。
が…国内盤で聴こえなかった、〈なにか〉が聴こえる。少なくとも遥かにクリアで、ひとつひとつの音があれやこれやの倍音(?)を伴い、スタジオの空気感さえ伝える(気がする)。
あの頃、聴いた音とは異なった音だ。
が、恐らくマスターテープ由来の情報量の多寡が、このいわく言い難い(が、聴けば分かる)差異の所以だ。
そして…ギターソロ。ううっ…胸に迫る、この音。
音量を上げれば上げるほど、リアリティも増す。
嗚呼、おれはあの頃、ジミー・ペイジの音を知らずに居た
人生、知らなければ幸せなこともある。
国内盤しか知らなければ、不満知らずで居られた。
が、知ったことは幸せ、かも知れない。
還暦も間近になれば、幸せを感じる機会も減る。
そういう吾が身に〈貴方を愛し続けて〉のソロは…沁みる。