『残穢』の発売に合わせて読みました。
全5巻…。
これまで読んだ中で一番長い小説だったかも(笑)
だから感想もいつもより長いけど、許してね☆←
屍鬼〈1〉 (新潮文庫)/新潮社

¥788
Amazon.co.jp
「村は死によって包囲されている」
山に囲まれた小さな村である外場では、猛暑の夏に三体の腐乱死体が発見されて以来、謎の病死が続いていた。
村人たちを襲うのは新種の疫病かあるいは…医者と僧侶が真相を突き止めるべく立ち上がる…
という話、かな。
フジリューがコミック化していたから、そちらで読まれた方もいらっしゃるかもしれませんね☆
『ゴーストハント』、『十二国記』と合わせて小野不由美さんの代表作といわれているので、今さら私があらすじを説明するまでもなかったかな…

☆
私はまあまあ面白かったと思うのですが、
4巻の途中まで、登場人物たちの間で情報が共有されず同じ話を違う人物の視点から繰り返していることが多かったので、そういった意味ではここまでが序盤になるんじゃないかな…と思います。
つまりこの長さに耐えられるかどうかが、この作品を楽しめるかどうかのポイントかとw
ぶっちゃけタイトル通り、村に蔓延する死の原因は病気なんかじゃなく“屍鬼”(吸血鬼)なんですけども←
その結論に至るまでの論理的(科学的?医学的?)プロセスがまどろっこしいっちゃまどろっこしいのですが、小野さんっぽいと思いました。
1、2、3巻には真相をわかりかけているのに止まらない死の連鎖に歯がゆい思いをし、4巻では人間の愚かさをこれでもかというように何度も鼻先に押し付けられているような気分になって、読んでいて非常に苛々しました。
そして他の方の感想にもありましたが、まさに最終巻のための4冊だったかと。(単行本では上下巻ですが)
敏夫(医者)、静信(僧侶)、沙子(謎の少女)や彼らに扇動される大衆としての村人や屍鬼に、象徴的というか暗喩的というか…この村の人たちって田舎や都会を関係なく現代人(日本人)を表現しているんじゃないかと思いました。
「自分だけは大丈夫」という無関心と鈍感さ、声の大きい者に先導され自分の頭で考えることを放棄する愚かさ、正義のためには外道な振る舞いも許されると思う傲慢さ、他人を犠牲にすることを善しとしない誇り高い者が真っ先に倒れていく不条理さ…
あと最初に真実に気がつくのに問題を解決する力がなくて、それゆえに不幸に見舞われてしまった子どもたちにも、暗示的なものを感じました。
原発、放射能、生活保護、領土問題、いじめ…読んでいてちらちらとそんなワードが頭を過りました。
十数年前の話なので、もちろん今の問題とは関係ないのですが、人間が抱えている普遍的な「負」の部分を描いているなあ…と。
深読みしすぎかなあ…

でもそう考えるとちょっと怖くなりました。
話も屍鬼も哀しいものなんですけどね。。
最後らへんで、好きだった女性キャラクターが屍鬼になっちゃうんですけど…その人の態度が救いであり、でもその人がこの物語で一番救われてないように思われて悲しかったです…。
スティーヴン・キングに影響されているらしいんだけど、そっちもこんなに重たい話なのかなあ。
結局一番幸せなのは屍鬼に襲われても「起き上がり」をしなかった死者たちかも…。皮肉だ。
敏夫は傲慢で短慮なとこもあるけど、たぶんそばにいたらこの人のことを信じると思う。
だからかなあ…その後の彼に何か希望になることがあれば良いなあと願わずにいられないのです。
理想主義の象徴の存在で終わるのかと思った静信は、最後に確かに彼がこの物語の主人公だったのだな、という変化を見せたので、好きではないけど「おぉ…」と思いました。
ジットリとした湿度の高い空気を味わえて、今の季節にはちょうど良い作品だと思います。