雄大な自然と豊富な地下資源をもつ藤の国


近隣諸国が戦乱の渦中、何処の国とも争う事なく中立国の姿勢を貫いてきた国


平和そうに思えるが中立という事は敵もいないが味方もいないという事

自国を守る為の軍備、国民を守る為の資源を維持するのは至難の技


それを支えてきたのが4人の息子を持つ前国王だった


頭のキレる国王であった彼は戦乱が落ち着くと息子達にこの国を任せ、早々に隠居生活を謳歌している






こんこんと湧き出る水が注がれる湖のほとり

澄んだ空気を吸い込みながら、欠伸をしているのは4兄弟の末っ子の潤 


高台にあるこの湖はこの国の雄大な自然と綺麗な街並みを一望できる

兄達と賑やかに過ごす城も大好きな場所だが、湧き水の音や澄んだ空気を感じるこの場所も潤のお気に入りの場所だ



両親と兄達の愛情をたっぷりを受けて育った潤は兄達と同じく帝王学や剣術を習って、同じ様に育ってきたはずが、人一倍おっとりとした人間に成長していた




「潤くん!1人で出歩いちゃ駄目だって言ってるでしょ!」


何故か知り尽くしているはずのこの地でも迷子になりやすい潤を追いかけて来たのは双子の兄、3男の和也



「えーっ、ここは大丈夫だよー」


「いやいや、そう言っていつも迷子になるのよ、あなた」



自覚のない潤の返答に「全くもう」と思いながらも、弟可愛さにそれ以上は言えない和也



「父上がお呼びですよ。だから迎えに来ました」



和也に手を引かれながら、父上のお呼びなら仕方ないと後ろ髪をひかれながら城に戻るのだった