8月の終わり
まだ、残暑が続く夜
それは突然の出来事だった
いつもの様にホテルへ向かい、部屋に入った瞬間に懐かしい匂いに抱き締められた
『なっ……んっ』
言葉を発しようとした時に口元を押さえ付けられて何かを嗅がされた
身体から力が抜けていく
崩れ落ちる瞬間に見えた顔は誰だか判別出来なかった
『智さん、ほんとに大丈夫なの?』
『大丈夫だよ、一応、医者だからなっ。信用しろよっ!』
懐かしい声が覚醒する俺の足元から聞こえる
ずっとずっと
心の奥底に大切にしまっておいた記憶
記憶と声がリンクする
『潤っ!』
目を覚ませば面影の残る顔が俺の瞳に映る
『俺…ここ……何処?』
『やっと起きたかぁ~~』
グリグリと頭を撫でられて、この手の持ち主がわかった
『さとし?』
『起きられそうか?』
背中を支えられてゆっくりと起き上がり、ベッドボードに寄り掛かる
さとしの後ろには記憶にある面影を残した人
『潤?俺……わかるかな?』
頷いた俺に一気に安堵の表情をした
『し……しょうくん……だよね?』
『潤っ!!』
ぐっと抱き寄せられて、泣きながら何回も俺の名前を呼ぶしょうくん
しょうくんの涙でぐっしょり肩が濡れた頃、その力強い腕から解放された