休止に入って早6ヶ月
久しぶりに身体を動かしたくて、マネージャーにリハ室を取ってもらった
「なんか懐かしいな………」
毎日毎日、ここで5人で踊っていた日々が遠い昔のように感じる
トレーニングはしているけど、あの日から歌って踊ってなんて事は全くしていない
「動けるかな?」
大きな鏡の前、俺たちの曲をスマホから流しながらストレッチを始める
充分に身体を解して鏡の前に立つ
一息吐いて身体に染み付いているあの曲を流す
曲が流れれば自然と振りが出てくるし、ステップも踏める
「おー、踊れるじゃん」
調子にのって何曲か立て続けに踊れるとさすがに疲れる
床に座り水分補給をしていると鏡の中の自分と目があう
数ヶ月前の自分と重なり少しだけセンチメンタルな気分に落ちそうになった時、リハ室のドアが開いた
「よっ!おつかれっ!」
「し、しょおくんっ?」
入ってきたのは、今日、地方から帰ってくる予定の恋人
「仕事が巻いてさ、早く帰れたんだ。マネージャーに聞いたらここにいるって言うからさ」
来ちゃった的な雰囲気を出して、俺の隣に座り撫でた肩に頭を寄せられた
「そんなしんみりした顔するなよ。」
「うん………」
優しく頭を撫でられて涙腺が緩む
「大丈夫だよ、俺たちは」
「うん……」
長い付き合いだからなのか、それとも苦楽を共にしてきた戦友だからなのか……
愛する人だからなのか
しょおくんは俺のメンタルが弱るタイミングに必ず傍にいてくれる
言葉にしなくてもなぜかその絶妙なタイミングを察知する
「また、ここで5人で踊って笑える日は来る。」
「来るかな?」
「あぁ、その為のパワーアップ期間だろ?」
しょおくんだって不安がないわけじゃない
だけど、こうやって俺の弱い部分が出てくるとそこに寄り添ってくれる
「さっ、俺もやる」
「エッ?しょおくんも?」
「なんだよ」
「いや……覚えてるのかなぁ……って」
「おいっ!俺だって曲が流れれば自然と身体が動くわっ!」
「そう?」
「た、多分………」
「多分……ね。よしっ、やりますかっ」
ずっとこのまま寄り添っていたいけど、そういうわけにはいかないから
お互い立ち上がり鏡の前に立つ
「なんの曲がいい?」
「なんでも大丈夫だっ!」
すっかりやる気満々な立ち姿の恋人を見て、イタズラ心が顔を出す
スマホの画面をスクロールして出した曲はリーダーが休止前に振り付けた最後の曲
「こ、これ?」
急に挙動不審になった恋人を横目に「ふふっ」と含み笑いをしてしまった